父はその女性と再婚し、子供が出来た。義理の弟だ。

 実は再婚した女性は父の大学病院時代の同期で母も知っている人だった。

 その後妻は実家が大きな総合病院で、父に再開業させてくれたらしい。

 でもそれには条件があった。総合病院となることが条件だった。

 後妻の実家は大きな病院グループを経営していたので、グループ内の力を強めたかったのだ。

 グループの医師を受け入れ、経営に口を出される。後妻の実家である病院グループの力を借りることは代償が大きかった。

 俺が小児科医となり就職の際、父から住田病院へ来るよう言われたが、後妻やその親族の力を借りて病院をやっている父の元に行く気にはなれなかった。

 義理の弟も医師になるとわかっていたからだ。

 彼は内科医になり、当たり前だが住田病院に入った。

 父は俺が自分と同じ小児科医になったので嬉しかったのだろう、宝田先生に縁談を持ちかけ、後妻の病院グループに宝田小児医療病院を誘った。

 俺が佳奈美さんと結婚すれば皆親族。色々有利だという考えだった。

 宝田先生は俺との縁談を使い、病院を大きくすることを考えていたわけではない。無理をせず、ここで治療が困難な患者さんは、今回の隆くんのように転院させる。

 佳奈美さんの姉の絵美にも医者の許嫁がいて、あらたな援助や繋がりはかえって面倒だと考えていたようだ。