まさかの、突然のお願いに思わず面食らう。


「いやいや、ちょっと待て。俺は読み聞かせなんてしたことないんだけど? カナタ――バカ竜にでも頼めばいい。あいつ、女には甘いから」


 ……半分は嘘。八代の圧とその子どもたちに散々せがまれて面倒見てたしな。嫌嫌読んでたら説教までされて――思い出すのも嫌だが、これもまたいい思い出というやつなのだろうが。


「読んでくれないの……? わたし、読んでもらったこと一度もない……。暁ともっと一緒にいたいのに。暁はいやなの……?」


 瞳に泉が生まれる。


 ――いつの間に。自分の気持ちを、ちゃんと伝えられるようになったのか。


 叶えてやればいいのだろう、が。子どもには見られない――無防備すぎて、本当“俺”に何度我慢させたら気がすむのか。


 可憐で美しく純粋。


 色々したくなる気持ちがどんどん増して、思った以上に少女の――シアに、振り回されている。