そして富井くんは制服の内ポケットから何かを取り出し鈴華の前に差し出した。
すると鈴華は目を丸くする。
目の前に差し出されたものは私の物で見覚えのあるハンカチだった。
「これ、私のハンカチ……」
富井くんは私の方を見て話し始める。
「俺が中3の時、怪我した俺に手当てをしてくれてありがとう。そしてハンカチを返すのが遅くなってごめんな」
私は顔を横に振る。
「今度あったら返すとあの頃、約束をしたが肝心な朝倉の名前を聞き忘れていた。だから俺はハンカチに刺繍されている〝S.A〟の名前の子をずっと探していたんだ」
あの日、私が助けた男の子は間違いなく富井くんだった。
ハンカチを受け取り、頭の中で整理する。

