「だって正美になんか甘えてるじゃない?自分ちみたいに寝ちゃうし。」

「なんか眠くなっちゃうんだよなぁ。」

「お酒強くないね。」

「うん。飲むと眠くなっちゃうんだよ。」

 武田くんは困った風に言った。

「正美の家に泊まったこともあるんだって?」

「うん。1度。」

「正美とそういう関係になってもいいって思った?」

「そういう関係って?」

「男と女の関係。」

「まさか!ありえないし。」

 驚いたように言う。

「有り得る話だよ。男が女の家で1晩過ごすんだから。そういう関係の2人なんだって人は思うよ、そう聞いたら。私もそうなのかと思ったし。」

「女じゃないよ。女なんて意識なんかしたことないよ、変なこと言うなよー。恋愛対象じゃないから!」

 武田くんは必死に弁解している。

「まあ私もいまはそうかなってわかるけどはじめ聞いた時は2人は付き合ってるのかなって思ったもん。」

「正美もちゃんと否定しとけよ!」

「正美は否定したくないのかもよ。武田くんのことかわいいと思ってるみたいだし男として見てるのかもよ。」

「ありえない。絶対ありえない。」

「そうかな?本当はそんな正美の気持ち、ちょっとは気づいてたんじゃない?」

 私が言うと武田くんは黙っていた。否定はしなかった。しばらく黙り込んだ後

「変なこと言うなよな。」

 と言ってまたブスッと黙り込んだ。

「はいはい。さ、眼鏡さがしにいくんでしょ?行こう。」

 私が先に席を立つと武田くんもノソッと後からついて来た。