それにしても武田くんは店にいるときとは全くの別人だった。いくらアルコールのせいとはいえ信じられない思いで見ていた。

普段のあの暗い目つき、荒れた感じが全くないどころか、ハイテンションで明るかった。

リラックスしていて正美の子供とじゃれ合う様子を見るとかなり慣れ親しんでいるような印象だった。子供の方も武田くんになついている。

「仲いいんだね。」

誰にともなく私は言った。

「2人はよく飲んでるの?」

「前はよく行ってたけど最近は久しぶりだよね。」

正美が武田くんに言った。

「そうだね。」

武田くんが答えた。

「池田くん、店にいる時とは全然違うね。」

私は言った。

「まあね。忙しいし仲いいやつとかあんまりいないし。浮いてんだ、俺。」

「同期もいるでしょ?何人か。中野くんとか山崎くんとか。あと森本くんもでしょう?」

私や正美のような契約社員と違い武田くんは正社員だ。

「そうだけど。みんな仲いいわけじゃないよ。俺だけじゃなくけっこうバラバラだよ。」

「そんなもんなんだ。」

「そんなもんだよ。俺達今は違うけど最初は寮も一緒だったけど別に仲いいわけじゃないよ。」

「同じ寮で仲いい友達とかいないの?」

「違う店にならいるけどね。」

「武田は自分で壁作ってるとこあるからね。」

正美が言った。私もそう思った。