隣の部屋で風呂から出てきた悟が缶ビールのプルリングを開ける音がした。低い音でテレビをつけている。しばらくしてテレビを消して悟が寝室に入ってきた。

「疲れた。」

独り言を言いながらベッドの私と反対側に入ってきた。すぐに寝息をたて始めるだろう。私の涙には気づきもせず。

私は声を上げて嗚咽し始めた。

「何?どうしたの?なんかあった?」

悟が私の様子を見に身体を寄せた。

「なんでもない。」

私は泣き顔を見せまいとして毛布を被った。

「どうしたんだよ?」

悟は私の毛布をはいで私の顔に触れた。

「なんで泣いてるんだよ?」

悟が聞いた。

「わからない。わからない。ただ悲しいだけ。」

「そんなこと言われたって俺だってわからないよ。なんなんだよ。」

「悟・・・」

言葉にならなかった。

「ごめん」

「何なんだよ、全く。もう泣くなよ。」

「うん。ごめんね。おやすみ。」

「寝るよ。おやすみ。」

私は毛布をすっぽり被って涙を隠した。悟も反対側を向いて横になったようだった。

しばらくすると悟の規則的な寝息が聞こえてきた。私も嗚咽して感情の爆発が終わるとやがて眠りについた。