葵凪を見つけたのは、任務を終えて帰る頃のことだった。
人より耳の良い俺は、たまたま遠くから罵声が聞こえてくるのを聞いた。
歩みを進める度に、罵声は大きくなっていく。




_二度と帰ってくんなw_

_あはははははwwwww_




そんな言葉が聞こえていた。

俺は、あるアパートの2階から女が出てくるのを見つけた。

それが葵凪だった。

葵凪は俯き、暗い表情で部屋を後にしていた。

どうやら途方に暮れているようだった。

彼女は地面に何かを投げ、傘もささずに立ち尽くしていた。

そんな葵凪を、どうしてか見過ごすことは出来なかった。

殺し屋が人を助けるなどプライドが許さなかった。

殺し屋ならば今すぐにでも殺してしまうべきだ。

それなのに、俺はいつの間にか家まで案内し、終いには彼女が風邪を引き、看病までしていた。





彼女と話す時にはやけに俺らしくない。


思わず笑みがこぼれるくらいに、頭を撫でたくなるくらいに、愛おしいとまで思うようになった。









これまでずっと、捜していた人がようやく見つかった。

そう、確信した。