「すっげー! 手際いいじゃん、ユノ!」

「腕上げてれば血ぃ止まんの?」

さっきまで騒いでいた男子たちは、ユノのテキパキした動きに見入り、いつしか冷やかすのをやめていた。

そして今は、ここから去ってく彼の周りを囲んでいる。

それから程なくして、マミちゃんたちが先生を連れて戻ってきた。

「山咲、怪我したって? 大丈夫か?」

「あ……はい」

先生はわたしの指先を見て、目を大きく開ける。

「なんだ、もう処置はしているのか」

「あ、これは湯前(ゆのまえ)くんが……」

「おお、湯前。アイツやるなぁ~」

ユノの応急処置のおかげで、ハンカチを外すともう血は止まっていた。


◇ ◇ ◇



保険医の先生からもちゃんと消毒してもらい、人差し指の包帯を触りながら自分の席に戻ろうとしていたら、背後から「果歩」と声がかかる。

「しずちゃん……」

「怪我したんだって?」
朝ではそっけなかった彼女が、心配そうに手元を見てくる。

「もう大丈夫! 血も止まってるから、作業に戻ろうと思って」

「そう。ならよかった」

安心する様子に、わたしもホッと胸をなでおろした。

「しずちゃん」

「ん?」

「最近のわたし、確かに……愚痴ってばっかだった。……ごめん!」

今なら仲直りできる、って思った。

毎日愚痴られ続けたら、そりゃしんどいよね。これからはもう言わないようにしなくちゃ。

そう反省して、謝ったの。

でも、しずちゃんは暗い表情で視線を落とすと、何も返さずに一点を見つめている。

そして、

「昨日のあれは……悪いのはわたしだから。ごめんね」

目を伏せながら、ため息まじりに返してきた。

眉間のしわと、ぎゅっと噛んでいる唇。

「……」

しずちゃんの様子をじっと眺めていた。

この違和感、昨日も持ったな。

昨日だけじゃない。ここ1週間で何度も感じていた。