劣化王子(れっかおうじ)

それからの3ヵ月間、わたしとユノは毎週末、ウォーキングデートをした。

この前は隣町まで歩いて、あの菜の花畑を見に行ったんだ。

「……菜の花、あんま映ってないね」

新学期を迎えた日の朝、その時の写真を見せると、しずちゃんは興味なさそうにそうつぶやいた。

「栄養を考えて痩せるって難しいんだよね。でも、着実に痩せてはいるんだよ……って聞いてる? しずちゃん!」

相変わらず、大学生になった先輩との連絡で忙しい彼女。

「クラス、みんな離れたね」

「まぁ。2年連続で同クラはないでしょ」

クラス分けのプリントを手に、スマホを触り続けるしずちゃんと校内を歩く。

鮎川は今年からバレー部員になるらしい。

最近は4人で集まることも難しくなってはいるけれど……。

「果歩、その写真……後で送って」

「っ……うん!!」

環境が変わっても変わらないものがあるってことは、ユノが教えてくれたことだから。

わたしの王子様は、見た目が劣化しても、やっぱり素敵な人でした。

優しい風が吹いて、ひらりひらりと舞う花びら。

青い空の下、わたしたちは2度目の春を見上げる。





【完】