“やっぱりもう好きなんだ”

そう思ってからのわたしは、これまで以上にユノを目で追うようになった。

でも、その頃からユノとの関係も変わってしまったような気がする……。



ホームルームが終わって、クラスメイトのみんなは帰り支度をし始めた。

いつもと同じようにのんびりとペンケースをカバンの中にしまうわたしは、ななめ後ろの席から聞こえた耳触りな椅子の音にハッとする。

「ユ、ユノ!」

慌てて声をかけると、立ち上がったばかりの彼は歩き出すのをやめ、こちらに向いた。

その表情はどこかかたく、よそよそしいものに感じる。

「あ……のさ」

ひるんでしまう。ここ1ヵ月で、ユノは遠い存在になってしまった。

でも、“今日は絶対に話しかける”って決めていたから。

「駅前にポップコーン屋ができたんだって! ユノ、前に“好き”って言ってたよね?」

これは朝から用意していた話題。

声をかけるタイミングがなくて、こんな時間になってしまったけど。

「よかったら今度……」

好きなものの話なら、きっと笑顔になるだろう。
そう考えていたけれど、どうやら誤算だったみたい。

言いながら“他の話題にすればよかったかな”と後悔した。

「……うん。また今度」

ポップコーンという言葉に一瞬だけ表情を曇らせていたユノは、穏やかに笑う。

想像していたものとは真逆の展開だった。

同じ言葉でもユノの“今度”は社交辞令のようで、笑顔で言われても“約束をした”という感覚は持てない。

「じゃあ」と言って、会話を終わらせるユノ。

これ以上を続けるのは難しく、わたしはそのまま帰ろうとする後ろ姿を静かに見つめた。

「ユノくん、まだダイエット中なんでしょ?」

「しずちゃん……」

わたしたちのやり取りを聞いていたのだろう。

支度を済ませた彼女は、カバンをわたしの机の上に置き、「次は食べもの以外の話にしてみたら?」と言葉を付け足す。

「……どこまで痩せるつもりなんだろ」

ユノがダイエットを始めてから、2ヵ月が経つ。

今の彼は全体的にスリムで、顔回りのお肉もなくなり、あごがくっきりしている。

痩せた男子と一緒にいるときは、まだ太っているようにも感じるけれど、これまでの体型を振り返ると、もう“ダイエットは成功した”と言い切っていいレベルだ。

スカートのポケットから出したポップコーン屋のチラシ。
朝方、立ち寄ったコンビニでは、レジ前にこれが束で置かれていた。

見た瞬間、ユノの喜ぶ姿がパッと浮かび、その表情を見たくて1枚もらったんだけど。

しずちゃんの言う通り、ダイエット中の彼にこの話題は向いてなかったのかも。

「あれ? いなーい……」

「もう帰ったのかな、湯前くん」

チラシを見つめるわたしの耳に、聞き慣れない声が届く。

“湯前”という言葉に反応して廊下側を見ると、そこには教室の中を覗く別クラスの女子たちがいた。

同じように目を向けたしずちゃんが、ぽつりとつぶやく。