少女マンガでは色々なキャラクターが存在している。

明るくて元気なタイプや、クールで無口なタイプ。熱血で涙もろいタイプもいれば、穏やかで優しいタイプも……。

個性がある人を見かけるたび、「あのキャラみたいだな」とマンガに重ねて見てしまうことがあるんだけれど、こういうタイプってわたしが読んできたマンガにはいなかった気がする。

「それにしても……よく考えたね」

いきなり手の甲にキスをしてきたキラオ先輩。

わたしは急いで腕を引き、唇が触れていた部分を爪でガリガリかいた。なんだか気持ち悪いから、まだ残っている感触をすべて消してしまいたかったの。

でも、先輩はなぜか満足そうな表情で、そんなわたしのおでこを人差し指でツンツンと突いてくる。

「まさか、そんな手で来るとは思ってなかったよ」

「……へ?」

何? なんの話をしてるの、この人は。

「ちょっと驚いたけど……でも新鮮だった」

驚く? それって、さっきのことを言ってるの?

体育館の中で、先輩に怒鳴った自分を思い出した。

「気に入ったよ」

パチンと鳴らした指で、顔を指される。
ぽかんとしてしまうわたしの前で、先輩は豪快に首を振って前髪を後ろへ流した。

そして、

「気に入ったよ」

ウインクをしながらそう言って、わたしのあごをクイッと掴んだ。

「……」

だからなんで2回言うの? ……って、問題はそこじゃないか。

戸惑いながらも、あごを掴んでくる手を押し返す。

「あ……あの、話の内容がよくわからないんですけど……」

キャラの濃さが気になってちゃんと聞いていなかったから、いまだになんの話をされているのかがわからない。だからもう一度、最初から話してもらおうと思った。

でも、聞き直そうとしたとき、それまで静かだったユノが、突然、わたしの腕を掴んできて……。

「ユ、ユノ……?」

「簡単に触らないでもらえますか」

先輩との間に割り込む彼は、そう言いながらわたしを自分の後ろへと追いやる。

視線をユノへと移した先輩は、含み笑いを浮かべて「キミか」とつぶやく。

「……果歩ちゃん、この人、知り合いか何か?」

この角度からじゃその表情は見えないけれど、ユノの口ぶりは尖っていて、この状況に機嫌を悪くしていることはわかった。

「えっと、知り合いっていうか……」
「“カホ”……うん、いい名前だね」

先輩はわたしの声をさえぎってくる。けれど、その目はまだユノに向いていて……。

「……や、普通の……名前、です」

慌てて言い返したけれど、なんだかケンカになりそうな空気……。

ピリピリした空気に焦って、ごくりとつばを飲む。

どうしよう、と心の中でつぶやいたとき、先輩は体を傾け、ユノの後ろにいるわたしを見ようとしてきた。

そして……。