“限界”って言葉は、たぶん、わたしといることに対してなんだろう。

「は？　なんでそうなるんだよ」

鮎川は眉間にしわを寄せ、呆れた態度をとる。

「え、でも……」

全部、繋がったよ？　

買い出し役を交代したがっていたユノの心境も、“限界”という言葉の意味も、ここまで怒る鮎川の気持ちも……。

“理由を知ったら、きっと……果歩は困ると思う”

あの言葉も理解した。

「わたしと行くのが嫌だから、そこまで怒ってるんでしょ？」

困るというよりは、少しだけショックかも。

限界を感じられるまで嫌われることって、そうそうないと思うから……。

何も言えなくなってうつむくと、鮎川のため息が聞こえた。

面倒くさいと思われているような気がして、胸の奥がずんと重くなる。

すると、彼は「ああ、もう」と苛立つような声で言ってから、

「……嫌いじゃねぇよ」
ぎこちない口ぶりでつぶやく。

そうっと顔を上げると、ふてくされた態度の彼はそっぽを向いていて。

わたしの視線を感じたのか、間を置いてから、目を合わせてくる。

「嫌ってねぇ……だから、そんな顔すんな」

そんな顔？　……今のわたしはどんな表情をしているのだろう。

ユノにも目を向ける。

深刻な顔つきだった彼は、気持ちを切り替えるかのようにパッと笑顔を作った。

「大丈夫。鮎川は……果歩ちゃんを嫌いじゃないよ」

無理をして笑っているような気がした。

その顔からはいつもの穏やかさを感じられない。