ただ、気づいてほしかった。

 彼が寝ぼけた様子であたりを見回していたときに私と目が合った。
その時、自分の鼓動が不規則に波打つのを感じた。原因はわからない、でも彼は私をまっすぐに見つめていた。

髪の毛のだらしない感じ、目の優しい感じ、声のトーンと見覚えのある雰囲気だった。
見たくもないものを無理やり見せられている嫌な感じはしない。ただ妙だったのだ。

 彼は私と目が合ったことなんて気にもせず、自分のグループの会話に加わった。

私も自分のグループに戻り、何事もなかったように時計は針を刻んでいった。