昼を過ぎても戻らない私達を心配して探しに来た母が、泣き声を頼りに、気絶する私とサウェリオを発見した。すぐに教会の医療所へ運ばれ診察を受けたが、私も弟も打撲と擦り傷のみで、大きな怪我は特になかったそうだ。

雑木林が広範囲に渡って落雷で丸焦げになっており、その中心部に狼の死骸が残っていた。

何が起こったのかは一目瞭然で、すぐに鑑定が行われ、私に魔力があることが判明したのだった。

そして、私の生活は一変した。

もし街中で魔力の暴走が起これば大きな被害となることは、雑木林の惨状を見れば明らかだった。

神父に私と弟が発見された場所に連れていかれ、魔力を持つことの恐ろしさと、暴走を回避するためには修行が必要なことを説明された。

まだ10歳だった私は、修行のため家を出ることに強い抵抗を感じたが、同時に家族を傷つけてしまうかもしれないという恐怖もあって、泣く泣く教会に行くことを決意した。

並々ならぬ魔力量と不安定さで、いつ暴走が起こるかわからない危険な状態であると判断され、家に戻ることは許されず、心の準備もできないまま、家族と引き離されることが決まった。

父は複雑な顔をして、

「修行が終われば戻ってこれるんだから、頑張るんだぞ」

と私の頭をくしゃくしゃに撫で、母は泣きながら私をいつまでも抱きしめていた。

修行を開始するには幼いうえに魔力量の多かった私は、なかなか魔力をコントロールすることができずに暴走を繰り返した。不安定な状態が続き、家族との面会も難しく、更に状況を悪化させる悪循環にはまっていた。

完全に魔力がコントロールできるようになって暴走しなくなり、ようやく家族に再会できたのは、それから3年も経ったあとだった。

教会での修行は強制ではなく、とりあえず魔力の暴走を起こさなくなれば、家に帰るという選択肢を与えられる。

しかしちょうど思春期を迎えていた私は、3年の間に募らせた両親への反抗心から帰宅を拒否し、そのまま教会で修行を続けるという選択をしたのだった。