「さっきの、新しい聖女だって言いたかったんです」

歩きながら聖女が教皇の弟に話しかけた。

「ああ、(かみ)じゃなくて(しん)だったんですね、なるほど、理解しました」

「まあ、聖女なんて神みたいなもんだから、勘違いもしちゃいますよね」

「聖女は神ではなく聖女です。そんな適当なことを言って問題になっても、私は助けませんよ?やはり聖女は通訳魔法をオフにしておいた方がいいかもしれませんね」

相変わらず、教皇の聖女の扱いが雑だ。だが聖女は挫けない。

「神はダメでも、(まこと)と書いて真聖女(しんせいじょ)もいいね、ゴジラみたいでいい」

「ごじら?」

「うん、ゴジラのシンは(かみ)(あたらしい)(まこと)(すすむ)、色んな意味があるって言ってたから、それがいい。うん、シン聖女がいい」

「しん聖女、、」

「サウェリオ、聞き流すのです。気にしたら負けです」

ああ、だよな。やっぱり教皇もそう思っていたのか。

そんなくだらない話をしながらしばらく歩いていたら、長く緩やかな丘が見えてきた。見晴らしのいい場所となると、結構歩くのかもしれないな。

「聖女、距離がありそうだし、おぶってやろうか?」

嫌がるかな?と思いつつ、念のため聞いてみると、聖女は上り坂をしばらく眺めて、渋々頷いた。

怪我や病気は治せるのに、まだ体力は1歳の赤ん坊で、魔法で回復できないとは難儀だな。

「恥ずかしくて嫌だろうけど何年か経てば体力がつくだろうし、それまでは俺がいくらでもおぶってやるから今は我慢だ、な?」

「レオ様、ありがとう」

そういって、聖女は俺の背中に飛び乗った。

「レオ様は優しくていい人だね。そして凄くいい匂いだ」

聖女が俺の首筋に顔を寄せてスンスン匂いを嗅いでいる。

「頼むから、匂いを嗅ぐのはやめてくれないか?」

「だって凄くいい匂い。何使ってるの?」

聖女が俺のうなじの辺りで深呼吸した。

「!!!」

「うわあ!レオ様!急に走らないでよー!」

やむを得ぬ事情が落ち着くまで、俺はひたすら走り続けた。

どんなに疲れていようとも、今後日々のメンテナンスを怠らないと心に誓った。