「憶えていないじゃ済まされませんよ?」

「はい、すみません」

「酔っているせいで魔法が制御されなかったら、あそこにいた全員が感電死していたかもしれないんです」

「はい、その通りです」

「教皇、聖女も反省してるみたいだし、そろそろ許してやってもいいのでは?」

「王子も他人事じゃありません。仮にも大国の王子が、人前であんな醜態をさらすなんて、恥を知るべきです」

「はい、確かに昨日は飲み過ぎました。弁解のしようもないです」

私を庇ったばっかりに、ジョニデの怒りがレオ様にまで飛び火した。

「わかってると思いますが、今後聖女は飲酒禁止です。王子もしばらく控えて下さいね?」

「まあまあ兄さん、結局みんな無事だったんだし、目の前で珍しい魔法が見れたってかえって喜んでたよ」

「そういう問題ではないんです!」

「わかった、わかったから!ほら、父さん達の墓参り、行くんだろ?」

弟さんのその言葉に、ジョニデもようやく溜飲を下げたようだ。ジョニデと違って、弟さんは優しくていい人そうだ。

「両親の墓は見晴らしのいい場所にあるんです。せっかくなんで聖女様も殿下も一緒に行きませんか?」

優しい弟さんのおかげで、延々続くかと思われたジョニデの説教から解放された。

反省していないわけではないが、ジョニデがこんなに粘着質だとは思わなかった。これからは怒らせないように気を付けよう。

「ご両親にお花を用意したいな!近くにお花屋さんはあるのかな?」

ジョニデは花屋さんなんて知らないだろうと弟さんに尋ねたら、不思議そうな顔をされた。

「聖女様はなんて?」

あ、、聞こえる言葉の意味はわかるようにしたけど、昨日は人が多かったから、私の言葉は通じないままにしたんだった。

通訳魔法のオンオフを自由自在に操れるようにはなったけど、どんなに魔力を絞っても数メートルの範囲で効果があらわれちゃって、個別にオンにするのが難しいから諦めたんだ。

下手なこと言わないように気を使いたくないし、私の言葉は理解できない方が都合がいい。

でも、弟さんはいい人だからオンにしよう。

「失礼しました。いつもお兄さんにお世話になってます。新聖女です」

「神聖女?え?(かみ)?」

「いや、違います。ニュー聖女です」

「にゅ?え?」

「サウェリオ、深く考えちゃいけない。察っするんだ」