弟に家族や知人を紹介され、すすめられるまま飲み食いし、質問責めにあっていた。

18歳で国を出てから家族と手紙のやり取りはしていたものの、どうしても長期間神殿を留守にできなかったため、帰郷することがかなわなかった。

故郷から神殿に仕える者が出るだけでも名誉なことであり、それが教皇となったのだから、このお祭り騒ぎもあながち冗談ではないのかもしれない。

ほとんどの場合、魔力があるとわかった時点で教会での修行が始まる。稀に修行を拒んだ者が魔力の制御ができずに大惨事が起こすことがある。それもあって、教会での修行を拒む者はほぼいないのだ。

そして、魔力の有無は遺伝ではないため希少価値が高く、修行を終えて教会で勤めるようになると、家族にも補償金が毎月支払われるようになる。私が神殿に勤めて教皇となったことで、かなりの補償金が家族に支払われていたと思う。

それもあって帰郷がかなわない後ろめたさから目をそらし続けていたが、親の墓参りすらしたことがないのは、いくらなんでも薄情過ぎるだろう。

弟の面目を潰すわけにはいかないので、丁寧に皆の質問に応えていた。やっと少し落ち着いたところで、ようやく弟と話せた。

「兄さん、疲れてるところにじいさん連中の相手までさせちゃって悪かったね」

「いやいいんだよ、これくらい」

「それにしても、聖女様が見つかって良かったですね。これで少しは兄さんの肩の荷もおりたんじゃないですか?」

「まあそうだな。まだやるべきことは多くあるが、とりあえずはほっとしてるよ」

「ところで、聖女様はどこの国の生まれなんですか?聞いたことない言葉ですよね?」

「え?」

「ん?」

「ハハハハハ!聖女が飲み過ぎて泣いてるぞ!」

王子のバカ笑いが聞こえて振り返ると、明らかに様子がおかしいふたりが目に入った。急いで止めに入るが、もはや手遅れだった。

何が悲しいのか泣き続ける聖女と、それを慰めようとする泥酔状態の王子と、それが気にくわなくて王子に襲い掛かるサル。

そんな団子状態で聖女が雷魔法を使い、3人もろとも感電した。

大慌てで王子とサルに治癒を施したのでことなきをえたが、雷魔法の訓練をしておいて本当に良かった。