「りょうちゃんは、私にとって特別な存在なの」

前世で40歳だったという聖女の特別な存在とは、やはり伴侶のことなのだろう。聖女が今も変わらず彼を愛しているのは、その表情を見ればわかる。

見ためは完全に子供だし、聖女はなぜか言動も子供っぽい。だがやはり、聖女は大人の女性だと感じる。

普段の聖女は、不器用なほどまっすぐで眩しいくらいに純粋だ。

それとは別に、精神的な強さや凛とした美しさを感じさせる瞬間が確かにある。

どちらが本当の聖女なのか。きっとどちらも本物なのだろう。

俺は前世の夫に嫉妬するほど、聖女に強く惹かれている。

生まれ変わって住む世界が違っても伴侶を想い続けるその深い愛情を、少しでも自分に向けて欲しいと願わずにはいられない。

俺とその夫は容姿が似ていると言っていたが、中身が似ているというサルにすらかなわないのが現状だ。

俺はつくづくついていないと思う。

俺がもし女だったら、今頃姫として城でぬくぬく暮らしていたはずだ。

生まれるのが数年遅ければ、兄と比べられることもなかっただろう。

母が側室ではなく王妃だったら、俺が王になっていたかもしれない。

そもそも王室に生まれなければ、、

いくつものもしもを想像しては自分を呪ったが、いつしか馬鹿らしくて考えるのをやめてしまった。

そして今、聖女が俺の顔を見てかつての伴侶を懐かしく思い出していること知った。

俺は聖女に愛されるどころか、昔の恋人を思い出すための道具のようなものだったのだ。サルにすらかなわないはずだ。

だが俺は、どうにもならないことをうじうじ考えて、時間を無駄にするのはやめたのだ。

少なくとも俺の顔は、聖女の好みの顔なのだろう。

サルの中身が好きならば、俺はサル以上の存在になればいいし、サルにはない良さを示せばいいだけじゃないか。

相手はサルだ、余裕だな。