王子の指示で影のふたりに強く魅了を施し、探りを入れるため、王国へと向かわせた。

さすがは王妃の影、なかなか優秀なふたりだったので、何かしら掴んで戻ってくるだろう。聖女の策敵能力の賜物だ。一体聖女はいつの間に探知魔法を覚えたのやら、、

とりあえず、聖女に雷魔法をちゃんと教えて、使いこなせるようにしておく必要を感じた。でないと、中途半端な状態で試し打ちして、大惨事を招きかねない。

「聖女、どうして急に雷魔法を覚えようとしているのですか?」

「え?なんとなく?かっこいいからかな?」

「まともな理由があるのなら、雷魔法の指導をして差し上げますが?」

「、、、」

どこまで正直に話すか迷っているのか。やはり私では全幅の信頼を得るのは難しいのかもしれない。

「私って見ためが子供だし、聖女ってだけで優しそうとか思われて、悪い大人達に舐められそうだなって思ったの」

聖女が声を潜め、突如熱く語り始める。

「ぶっちゃけ、王国に行ったら敵だらけな気がするし、できるだけ到着を遅らせたいんだけど、いつまでもってわけにはいかないじゃん?で、雷って神の怒りって感じがするし、わかりやすく威圧になるかなって思ったんだよね。怖がらせるだけなら呪い的なやつでもいいかと思ったんだけどね。ほら、私ってば聖女だから、呪いはやっぱりイメージにそぐわないかなって思ったわけ。それに、呪いだと対象が必要だけど、雷だったら物とかにバーンってやるだけでオッケーっていうのもポイント高いよねえ。無駄に人を傷つけるのは本望じゃないっていうか。炎は場所を選ぶし、風は地味だし、やっぱ雷しかないよね!」

あまりの勢いに正直面食らってしまったが、嘘や誤魔化しのない、単純な憧れから雷魔法を覚えたいという想いが伝わった。

聖女の中で過去のわだかまりは既に消えているのだろうか?少なくとも、私がそれを感じないようにしてくれているのかもしれない。

なんとありがたいことだろうか。

私の得意の攻撃魔法が雷であることを、こんなに嬉しく思う日がくるとは思ってもみなかった。

「わかりました。雷魔法は得意なので、お任せ下さい」

そういって、指先で放電させてみせる。

「えー!何それ!ジョニデ超かっこいい!私もそれやりたーい!」