聖女の捜索が開始されてから、既に2ヵ月が過ぎようとしていた。

トレドミレジア王国の国王である父の命により、軍に所属している王子の俺は、捜索隊の長として捜索に加わり、王国の南東にあるポルポラという小さな町を拠点にして活動を行っていた。

雲を掴むような手応えのない捜索が続き、皆が疲弊し始めている。王国の南に位置する大森林から聖女の魔力が感知されたとのことだったが、贅沢を言えばもうちょっと範囲を絞った報告が欲しかった。

10年前の捜索では、全世界の国や教会へ通達を出し、身元不明の赤ん坊がいないかをくまなく調べあげたという。結果、条件に合う赤ん坊が世界中で多数発見されたが、その中に聖女はいなかった。その後、召喚の日近辺に産まれた女子全ての調査も行われたが、やはり発見には至らなかったそうだ。

世界規模の大捜索を思えば、森にまで範囲が絞られたのは喜ぶべきなのかもしれない。

しかし、10歳の女の子が、この森の中でどうやって暮らしているというのか。

危険の少ない場所や、少しでも生活しやすい場所を検討して捜索しているものの、全く人の気配を感じないのだ。かといって、少しでも森の奥へ隊を進めると、熊や猪などの大人でも危険だと感じる動物がうじゃうじゃいるのだから、捜索するだけ無駄というものだろう。

それとも、森の奥に危険から隔離された安全な場所があるのだろうか?だとしても、あるかもわからないその場所を、どうすれば特定できるのか、皆目見当がつかない。

俺は空を見上げて大きくため息をついた。