「林の中に隠れて私達の様子を伺ってるふたり組がいるの」

聖女が突然そんな不穏なことを言い出した。

それが本当なら相手に気づかれては困るので振り返れないが、気配は一切感じない。

「確かなのか?」

釣りを続けながら聖女に問う。

「うん、魚を探そうと思って探知魔法を使ったから誰かいるのは間違いないよ」

一体いつから見張られてるんだ?

強盗なら馬車の方を襲うはず。俺か聖女のどちらかが狙いってことか?だとしたら、王国の手の者なのは間違いないだろう。

「相手の動きを見たいから少し俺が移動してみる。聖女がひとりになったら攻撃されるかもしれない。相手にバレないように結界を張ることはできるか?」

「うん、多分できる」

シュッ!という音がして、俺達のすぐ後ろに結界が出現した。

「じゃあ少し離れる。相手に動きがあったら魚が釣れた振りして俺を呼ぶこと、いいな」

「オッケー」

オッケーってなんだ?と思いながらも、数十メートル上流に移動した。

林の中からでは移動した俺を目視することはできなくなるので、俺を狙ってるなら動きがあるはずだが、動きがないということは、狙いは聖女だ。

その考えに至った途端、結界が消えた。

まずい、聖女に何かあったのか!?

急いで聖女の元へ戻ると、聖女の足元で小さな結界に閉じ込められたふたり組の男がジタバタしていた。

「あ、レオ様!この人達、私を捕まえようとしてコソコソ近付いてきたから、逆に捕まえてみた!」

なんだそのどや顔は、動きがあったら俺を呼べと言ったはずだよな?

「どうする?中の空気抜いて弱らせようか?それとも呪っとく?」

聖女が満面の笑みで結界をなで回している。だからなんなんだ、その聖女らしからぬ言動は。

「雷魔法を試してみたかったんだけど、加減できなくてうっかりやり過ぎちゃったらやばいから、我慢したの!ねえ、えらい?私、えらい?」

お、おお、えらいな。えらい、、のか?