目が覚めると、俺はりかちゃんの腕の中にいた。

まじか、転生成功か?ん?サルのままだな?怪我もしてない。あれは夢だったのか?

うわーやっぱ前世で刺されたのが尾を引いてるのかなあ。これがトラウマってやつか。

そんなことを考えていたら、巨大な熊がこっちに歩いて来るのが目に入った。

あれ?結界がなくないか?てか、動物達がどんどん集まってきてる気がするけど、これは一体、何が起こってるんだ?

危険動物達に周りを囲まれ、緊張状態が続いていたが、更なる危険がやってきた。

人間が集まってきたのだ。

あれは夢だと思ったのに、人間の中に俺を斬りつけた男がいて、混乱する。

どうやら動物達は、りかちゃんを人間から守るために、俺達を囲んでいるみたいだった。みんなやばい奴がいるって知ってるんだ。

強引に近付いてくるかと思った人間は、そのままの状態で1ヵ月以上も待機していた。

りかちゃんが眠りっぱなしだったから。

これも異世界あるあるなのか?さすがにおかしいだろ?

とりあえず赤ちゃんの頃みたいに果汁を口に流し込んでやる。

しばらくして、寝ているりかちゃんがほわっと光る度に、ほんのり成長してることに気づいて驚かされた。だから短期間でこんなに大きくなったんだなと、妙に納得した。

その後目覚めたりかちゃんに、俺は更に驚かされることとなる。

りかちゃんは人間がそばにいるのを見つけると、俺を抱いて近づいていった。

ざわつく人間達の中に俺を斬りつけたやばい奴を見つけ、りかちゃんがそいつに近づくのを止めたくて、必死でしがみついた。

そいつが突然、俺にしたみたいに、そばにいた猪を斬りつけた。

あの時の強烈な痛みが背中に走ったような気がして、場違いに『ああ、これがトラウマなのか』と頭に浮かぶ。

そいつの行動と俺の様子から何かを察したのか、りかちゃんが突然豹変した。そいつを睨みつけるりかちゃんが、何やら禍々しいオーラを放ってると感じるのは、多分勘違いではないだろう。

嘘だろ?そいつ、なんか苦しがってるじゃん!まじか!りかちゃん!ちょっと待て!一旦落ち着けって!

不穏なオーラが更に増し、これ以上はなんかやばいと感じる。

りかちゃん!駄目だ!そんなことしちゃ、絶対駄目だって!

俺はりかちゃんの顔を思い切り爪で引っ掻いた。

しまった!と思ったけど、りかちゃんの顔にできたエグい傷が、あっという間に消えていく。マジか、りかちゃん。なんか凄いな。

りかちゃんのやばいオーラが消えるのと入れ替わりに、結界が張られた。結界もりかちゃんのだったのねえ。

りかちゃんは猪に近づいてその傷をそっと癒し、自分が傷つけてしまった人間も同様に癒した。

そうか、俺の傷も、こうしてりかちゃんが治してくれたのか。俺のチートもまあまあかと思ったけど、りかちゃんのは段違いだ。やっぱりかちゃんには癒しの魔法がお似合いだと思う。

正気に戻ったりかちゃんは、その後しばらく結界の中で、俺や動物達と穏やかな時間を過ごした。