あるあるだとしても、気持ち悪いくらいの速度で大きくなった赤ちゃんは、あっという間に歩くようになり、すぐに喋るようになった。

「エクチュペクチョパチョリョーニャー」

あ、こいつ、絶対日本人だ。まじか、俺はサルだってのに、人間に転生か、なんて羨ましいんだ!

でもまあ、あれだな。どうやら捨て子みたいだし、俺がいなかったらどうなってたかわからなかったこいつは、ちょっとかわいそうだよな。ほら、今だってなんだか寂しそうな顔をして、、

「しゃるとじゅっといっちょにいたいにゃあ」

え?

聞き覚えのあるそのセリフに、時間が巻き戻る。偶然だよな?

幼女の顔を見つめると、俺が愛してやまなかったりかちゃんの面影がそこにあった。

嘘だろ?りかちゃんなのか?

俺はこの再会が幸運なのか不運なのかもわからず、ただ目の前にりかちゃんがいることに涙した。

俺も、りかちゃんとずっと一緒にいたいよ。今度こそ絶対にずっと一緒だ、約束だよ。

俺とりかちゃんは、この前と同じ光に包まれた。

異世界あるあるだ、気にしたら負けだ。

りかちゃんにいつもとは違う果物を食べさせてあげたくて、少し離れた場所に来たら人間に遭遇した。こんな近くに人間がいるとは思わなかったが、りかちゃんを見つけてもらえるチャンスかもしれないと思った。

俺はできるだけ愛嬌たっぷりを心がけ、人間に姿を見せた。

「お?なんだこいつ、かわいいな」

しめしめ、かかったな。よし、俺についてこい!そう思って、結界の方に進もうとしたら、背中に激痛が走った。

「遊んでんじゃねーよ、早く行こうぜ」

振り返ると、剣を持った男が冷たい目で俺を見おろしていた。その目が、俺が苦しむ様子を見て、興奮で光るのを感じた。

こいつ、やばい奴だ。

人間達は俺をそのまま放置して、森の奥に消えて行った。あいつらがりかちゃんのいる結界とは逆の方向に進んだのは不幸中の幸いか。

そうだ、俺はりかちゃんとずっと一緒にいるって約束したんだから、こんなところで死ぬわけにはいかない。そう思って必死に結界を目指した。

そういえば、ここは異世界なのに、あの人間達の言葉が聞き取れたな。よく考えたら、サルなのにりかちゃんの言葉を普通に理解できることがおかしいのか?

ま、異世界あるあるだな。俺のチートは言語能力だったってことか。おかげでりかちゃんに気付けたんだから、かなり使える能力だったな。

ああ、やっと結界まで来たか。最後にひと目でいいから、りかちゃんに会いたかったな。

りかちゃん、俺が死んだらひとりで泣いちゃうよな。ごめん、本当ごめん。今度こそずっと一緒にって約束したのに、本当にごめんな、りかちゃん。俺の大好きなりかちゃん。

願わくば、もう一度転生して、りかちゃんに会いたい。