そんな幸せな日々が永遠に続く気がして、少し成長して大人になった俺は、りかちゃんとの結婚を考えるようになっていた。

実はとても優秀な医者だったりかちゃんは、相変わらず全力投球で仕事に打ち込んでいて、結婚なんてこれっぽっちも考えていないことは、確かめるまでもないことだった。

整体師として地味に仕事を頑張っていた俺は固定客が多く、以前の倍近く稼ぐようになっていた。俺の精一杯のその年収は、きっとりかちゃんの半分にも満たない。

それでもりかちゃんとの結婚を諦められない俺は、彼女に内緒で指輪を買っていた。渡せない指輪をバッグに入れて持ち歩くようになって、既に3年が過ぎようとしていた。

ある日、りかちゃんが倒れたと知って急いで病院に駆けつけると、俺の顔を見るなり、彼女が泣きながら謝ってきた。

「ごめん、りょうちゃん、本当にごめんなさい」

俺と別れたくないと泣くりかちゃんが、何をそんなに謝ってるのかは全くわからない。

どうして突然別れるなんて話になるんだ?でもりかちゃんがこんなに泣くのは初めてで、俺は猛烈な不安に襲われた。

今言わないと絶対に後悔する気がした俺は、ずっと持ち歩いていたあの指輪を出して、りかちゃんにプロポーズをした。

指輪を目にしたりかちゃんは、驚いて、戸惑って、一瞬恐怖が浮かんで、混乱して、また泣き出してしまった。

状況は全くわからないけど、とんでもなくまずいことになってるということだけは理解できた。

もしかしたら最悪の事態も考えられる、、楽観的な俺がそう感じずにはいられない雰囲気が、りかちゃんの周りで漂い続けている。

そんなこと考えたくない。考えたくないけど、もしそうだとしたら、今りかちゃんはひとりで苦しんでるのか?

そんなの、耐えられない。俺はりかちゃんの幸せそうな顔を見ていたいんだ。

「お願いだから、俺のお嫁さんになってよ」

泣きながら懇願する俺に、りかちゃんはようやく頷いてくれた。