「大丈夫ですか?」

心配してくれたのか、教皇が声をかけてきた。

「私が聖女に故郷の話をしてしまったのがいけませんでした。申し訳ありません」

教皇も聖女の提案に驚いていたし、今回彼は無関係だろう。

聖女を王国に無理矢理連れて行くことはおそらく可能だが、今更そんなことはしたくない。だったら俺は、おとなしく聖女についていくしかないじゃないか。

「私も、神殿が大変な時期だとわかっていながら、部下に仕事を押しつけてきた身なので、お察しします」

聖女が戻るのを待ち望んでいるのは、神殿も王国も同じということか。

ああ、報告書をどうするか、、頭が痛いな。

教皇の故郷ピスタリーノ国は、ポルポラから東へ馬車を走らせ半月程かかる。

元々王国へ向かうために馬車を用意するつもりだったのだが、長旅になりそうなので、思いきって荷馬車を購入することにした。

少し帰国が遠退いただけだと腹を括ってしまえば、今は純粋に旅ができることを嬉しいと感じている。聖女や教皇に比べれば大したことないが、王子というのも、それなりに窮屈な職業なのだ。

「昨日いっぱい歩いて疲れちゃったから、今日はジョニデとお留守番してる」

聖女を買い物に誘ったら、あっけなく断られてしまった。許すと言ってた割に、妙に距離を感じるじゃないか。

そういえば、昨日の聖女はかわいかったな。そうだ、俺からも何かプレゼントを用意しよう。髪飾りがいいだろうか。昨日と雰囲気の違う服でもいいかもしれない。

俺は早速、服屋に足を運んだ。聖女と教皇が入った店と同じだったようで、店主が昨日のふたりの様子を聞かせてくれた。

「おふたりで楽しそうに服を選び合ってましたよ。こちらが声をかけるのを戸惑うほどに仲良さげで、羨ましい限りでした」

どういうことだ?あのふたり、どう見ても親子だろ?確かに教皇は若く見えるが、年齢的には、下手したら聖女は孫だぞ?

ああ!脳が破壊されそうだ!

俺は目についた髪飾りと、聖女に似合いそうな服を何着か購入して、慌てて宿に戻った。

ふたりは教皇の部屋でお茶を飲みながら話をしていた。

聖女にお土産を渡すと、

「おーさすがレオ様、趣味がいいね!嬉しい!ありがとー!」

と言って、喜んでくれた。

俺は、何を心配していたんだ?