しばらくすると、サルが何かを抱えて戻ってきた。

甘い匂い、果物かな?

想像しただけで唾が溢れる。

もしかしてそれ、私にくれるの?見せびらかしに来ただけとか、本当やめてね?そんなことしたら、どんな手を使ってでも、絶対にお前を呪ってやるからな!

そんな不穏なことを考えている私をよそに、サルは器用に皮をむいて私の口元に果実を押し付けてきた。

桃のような感じの果物で、歯のない私がいくらそれを噛っても、果汁が口の中に入ってくるだけだった。

この体になって初めての食事。

体の全細胞が、送られてくる栄養を吸収するために、一気に動き出す。脳が痺れる、手足に血が送り込まれる、今まで私は、どうやって命を繋いでいたのだろうか?

サルは私が満足するまで延々と果汁を与え続けてくれた。

サルが果汁まみれのベトベトを舐めて綺麗にしてくれるのが気持ち良くて、うとうとしながら心の中で感謝の言葉をかけた。

(呪うとか言って本当ごめんなさい。あなたは私の命の恩人です。この恩は一生忘れません)

その瞬間、サルと私はホワッとした光に包まれた。

それはほんの一瞬の出来事で、既に眠りかけていた私がその光に気づくことはなかった。

その後もサルは私から離れず、いつも一緒にいてくれた。毎日せっせと私に果汁をくれてはベトベトを舐め取ってくれる、最高にいい奴だ。

栄養を取るようになってしばらくすると、体が成長し始めた。

歯が生えて果実も食べられるようになり、成長が加速する。ずっと寝たきりだったのが嘘のようにサクッと寝返りをマスターし、あっという間にハイハイで移動が可能になった。

相変わらず全裸な私は、森の中を移動するようになって生傷を作るようになり、あることに気づいた。

まず痛みをほとんど感じない。そしてすぐに傷が治るのだ。

我ながらちょっと気持ち悪い。

まあ自分が普通じゃないってことはさすがに気づいてたよ?でもほら、今までは実際に目に見える感じじゃなかったし?見ためはこんなだけど、一応私は立派な大人なわけですよ。

だからってわけじゃないけど、あんまり認めたくないっていうか、、

魔法っていわゆる中二病みたいだし、ちょっと抵抗があるっていうか、、

「あーうー」

駄目だ!呪文が唱えられない!