聖女と教皇が、町から戻ってきた。よほど楽しかったのか、聖女の機嫌が直っているようで、安心した。

ふたりは服屋に行ったようで、新しい服を着て、だいぶイメージチェンジしていた。

聖女はちょっといいところの娘さんといった感じだろうか。凄くよく似合っている。うん、かわいい。

教皇は旅人が好んで着るような服を身につけているのだが、異様なほど似合っている。魔力を持つものは老けづらいとは聞いていたが、王である俺の父より年上だったはずの教皇は、父よりかなり若く見える。

そして、いつもの服では全く気付かなかったが、なんでそんなにいい体をしているんだ?教皇は、祈ってるだけじゃなかったのだろうか。なんか悔しいな。

「レオ様、昨日のことは許してあげるから、お願いがあるの」

聖女が突然俺に話しかけてきた。今朝露骨に無視されてショックだったから、ちょっと嬉しいな。

だが昨日のことを許すとは、、別に許されなきゃいけないようなことはしていないと思うのだが、蒸し返すのはよしておこう。

「なんだ?どうかしたのか?」

「ちょっと回り道して、ジョニデの故郷に寄りたいんだけど、別にいいよね?」

え?どういうことだ?

教皇の方を見ると、彼も聖女の言葉が意外だったのか、驚いた様子で聖女を見ている。

できるだけ聖女の希望に添いたいと思ってはいたが、これは想定外だった。そんなの、王国にどう報告すればいいんだ。

頭を抱えてため息をつく俺に同情したのか、聖女が昨日サルにやられた顔の傷を綺麗に治してくれた。

なんて優しい子だろうか、と絆されかけた。

でも、冷静になれ。回り道をしたいと言って俺を困らせているのは聖女だし、サルが俺を引っ掻いたのも聖女が原因だし、そもそもそのサルは聖女のサルだ!

もう無理だ、我慢の限界だ。

「え?だったらレオ様だけ先に王国に帰ればいーじゃん」

回り道するのは無理だと伝えると、聖女が悪びれる様子もなくそう言った。

なんだこの聖女は?さっきお願いがあるって言ってたよな?決定権はこっちにあるんじゃないのか?言葉を失って立ち尽くす俺に、聖女がとどめをさす。

「私がジョニデの故郷に行くのはもう決定事項だから。レオ様も一緒に来たかったら、別についてきてもいいよ?」

あれ?ちょっと待てよ?

俺は聖女を見つけて王国に連れ帰る旅をしているんじゃなかったのか?それがいつの間にか、俺も聖女のお供のひとりになっていたというのか?

いや、聖女は唯一無二の存在だ。俺なんて聖女を前にしたら所詮その程度の存在だろ?

ああ、混乱する。どうして俺はこんな目にあっているんだ?