「ねーねージョニデ、教皇ってやっぱ偉いの?」

「そうですね、なろうと思ってなれるものではないかもしれません」

「ほお、じゃー教皇と聖女はどっちが偉いの?」

「それはもちろん聖女です。聖女がいなければ、世界は成り立ちませんからね」

「まじか。私、聖女だよ、凄いね」

「はいはい、凄いですね」

なんだろう、教皇が聖女を敬ってる感がまるでない。勘違いだろうか。

そういえば、出発して1時間近く経ったが、聖女効果で動物の襲撃が本当にない。聖女凄いな。でもこの感動は心の中でとどめておこう、面倒臭そうだ。

ん?なんか聖女の様子がおかしくないか?

「どうした?調子でも悪いのか?」

声をかけた途端、聖女がパタッと倒れた。

「なっ!聖女!?どうした!」

慌てて駆け寄ると、聖女は眠っていた。

「え?嘘だろ?まだ1時間だぞ?」

「10年間寝たきりだったせいで、聖女は体力的な問題を抱えているのかもしれませんね」

「嘘だろ?1時間でこれじゃ、いつまで経っても森から出られないじゃないか」

俺は頭を抱えてしまった。

いや、こうなったら、聖女を歩かせるのはやめよう。俺は荷物を再配分して、聖女を背負って歩き出した。

聖女はその日、起きることなく、俺の背中で眠り続けた。聖女が子供で助かった。

翌朝、聖女に俺の背中へ乗るように言うと、全力で拒否された。

「え?やだよ!私歩く!」

は?歩けないだろ?あんまワガママ言うなよ?

少し前に聖女のワガママは聞くと言った気がしなくもないが、勘違いだろう。

口には出さずとも、俺が思ってることは通じたようだ。

「せめて疲れるまでは、歩きたい」

は?疲れて突然倒れたのはどこの聖女だ?意識があるのとないのとじゃ、重さが違うんだぞ?

「うぐぅ、、」

さすが聖女、テレパシーだな。全て伝わっているようだ。

「だったらレオ様に乗るのはイヤ、絶対拒否」

なんだと?俺を拒否するなんてこの聖女頭沸いてんのか?この面子なら100人中150人が俺を選ぶはずだろ?

拒否されたショックで混乱している間に、聖女が周りを見回し、護衛のディオネッロを使命した。

「そこのマッチョ!キミにきめた!」

そう言って、聖女はピョンとディオネッロに飛び乗る。

「う、マッチョ、ちゃんとお風呂に入ってないね?レオ様と違ってちょっとスメルがバッドだな」

スメルがバッドが何かはわからないが、話の流れから、どうやらディオネッロが少し臭うらしい。

「も、申し訳ありません!香油は高価なので、私にはなかなか手が出なくて」

「なるほど、格差社会ってやつだね?ドンマイだ、マッチョ!」

その後聖女は何やらブツブツ呟いていたが、大人しくしていたので、そのまま出発した。

余程ディオネッロが臭うのか、しばらく聖女は「ぬうう」とか「むうう」とか唸っていたが、突然、

「やった!できた!」

と騒ぎ出した。

「ねえねえ!レオ様!ちょっとマッチョを嗅いでみて!」

なんで俺がそんなことをしなくてはいけないんだ。

「もお!いいから!早く!」

しょうがない、くそっ、俺はこれでも王子だぞ、、あれ?

「なんでだ?全く臭わないぞ?」

「でしょ!?名付けて!消ー臭ーリッキー!どうだー!私が聖女だー!ハハハハハー!」