『野生のサルがあらわれた!』

国民的RPGの戦闘シーンで流れるあの独特な音楽が脳内で再生される。

あまりに何も起こらないので、この森には私以外の生物が存在しないのだと思い込んでいた。

まだ赤ちゃんなのか、そういう種類のサルなのか、大人なら手のひらに乗せてしまえるほどに小さいサルだけど、身動きの取れない私にとっては、大いなる脅威となるだろう。

やばい、久し振りに超やばい。

目を合わせないようにしつつ、様子を伺う。

サルはジワジワと距離を縮めて私のすぐそばまでやってくると、そこでちょこんと腰をおろした。

なにこれ、凄くかわいい。

何をするでもなく、ただ私を見ている様子のサルは、そこから動こうとしない。

全然動かないサルを警戒することに疲れて、いつもの癖でうとうとしてしまった。

目が覚めると、私のお腹の上でさっきのサルが一緒に寝ていた。

「あーうー」

久し振りに声を出してみたが、やはり喋れない。

私の声で目を覚ましたサルが、クリクリな目で私を覗きこむ。

かわい過ぎるな。

手を動かしてサルに触れようとしたら、スルッと逃げられてしまった。

サルが消えた先をじっと見つめる。

悲しくて泣きそうだ。

ずっとひとりぼっちでいることが寂しくてしょうがないと、あのサルのせいで気づいてしまった。

私が初めて目を覚ましてから、どんなに軽く見積もったとしても、既に半年以上の月日が流れていた。