「ジョニデ!お前は今日からショーコーだ!」

「え?いや、私は教皇ですが?」

「いや!ショーコーだ!」

「ちなみに、ボアを習得したら、とりあえずお前で試し打ちだ!」

「ボ、ボア?」

「ん?ボアはアイドルの名前か?」

しばらく戻らないと思っていた聖女が数時間後にフラッと現れ、意味不明なことを教皇に向かって叫んでいる。教皇が混乱して取り乱している。気の毒だが俺にできることはないだろう。

そもそもジョニデとはなんなのか、意味がわからない。いつか聞いてみよう。

それにしても、聖女はもう吹っ切れたというのだろうか。俺の謝罪もどうかと思うほど軽く流され、これでいいのかとこっちが不安になってしまう。

やはり10年以上森の中で動物達と暮らしていただけあって、聖女はもはや悟りの境地に立っているのかもしれない。

全てのことは、聖女にとって些末事に過ぎないのだろうか。まだ幼いのに、強烈な魔力だけでなく、並外れた精神力まで兼ね備えているとは、さすがは聖女である。

だからといって、聖女が過ごした11年が、過酷じゃなかったことにはならない。取り戻すことはしてやれないが、これからたくさん与えてやることはできる。

「聖女、腹は空いてないか?シチューでも作ろうか!」

何やら怪しい呪文を教皇に向かって唱え続けていた聖女が、満面の笑みをこちらに向けてきた。

「シチュー!だいしゅき!」

なんだそれ、かわいいな。