「11年か」

私はあの場所に横たわり、うんざりするほど眺め続けて見慣れた景色を、久し振りに眺めていた。

動けるようになってから、無意識にこの場所を避けていた自分に気づく。

サルが現れた時、自分の体の大きさから、まだ1年は経っていないと判断した。

理性が下したその判断とはうらはらに、数えきれないほどの昼と夜を繰り返し、無限とも思える思考の時間を過ごしてきた私の感情が、そんなわけないと叫んでいた。

かなりの時間を寝て過ごしていたのは確かだろう。それでも尚、気が狂うほどの時間が、覚醒した意識の中で経過したのだ。

痛みはなかったし、結界のおかげで外的な恐怖がほぼなかったことは救いだった。

負の感情に飲み込まれそうになった私を何度も浮上させたのは、痛みや恐怖の少なさによってもたらされる楽観的な思考と、睡眠によるリセットだった。

永遠に続くこの不自由な時間がつらくて苦しくて、私をこんな目に合わせたやつを、繰り返し繰り返し繰り返し呪った。

だがそれすらも、脳内で白装束のお姉さん達を陽気に踊らせることで、深いところまで落ちることを防ぎきったのだ。

あんなにも怨み呪った相手が目の前に突如現れ、混乱した。

正直、サルと出会う前だったら、あの時ジョニデを呪い殺していた可能性はゼロではなかった気がする。

よくわからないけど、多分そういうことだ。サルと出会ってからジョニデと出会った、それが重要なんだ。ジョニデとの出会いが先だったら、私はサルと出会えなかった。ジョニデが私を森に召喚しなかったら、私はサルに出会えなかったんだ。

サルを酷い目に合わせた人間を呪い殺しそうになった時、私を止めたのはサルだった。サルは私が誰かを呪うことを望んでいない。

だとしたら、ジョニデを怨む気持ちを持ち続けるのは、自分を苦しめるだけで何も得るものがないのだ。

そもそもジョニデは悪意を持って私を森に召喚したわけじゃないのだから、言ってしまえば事故のようなものなのかもしれない。

煮え切らない思いがなくはないけど、時間は巻き戻せないし、どうしようもないじゃないか。

なんにしても、このままというわけにはいかない。ジョニデと話そう。

踏ん切りをつけるためにも、私は再びテントに向かうことにした。