やばい、食事がまじでやばい。

こんなことでサルへの感謝の気持ちが揺らぐことは絶対にない。絶対にないけど、、調理された肉や野菜の破壊力は凄まじかった。

日本では庶民的な生活をしていた私だけれど、ナイフやフォークの使い方くらいはわかる。

でも今の私は子供だし、ずっと森の中で暮らしていたし、知らないふりして手掴みでガツガツ食べてしまおうかと、本当ギリギリまで悩んだよね。まあ結局、ナイフとフォークを使ってガツガツ食べちゃったけど。

ああ、満足、ご馳走様でした。

と、ひと息ついたところで、レオ様が話し始めた。

「聖女の大切なサルを傷つけてしまったこと、改めて謝罪させて欲しい。すまなかった」

あら、レオ様ったら、随分真面目な好青年なのね。好感度爆上げ。

「サルを傷つけたのはレオ様じゃないし、今はサルもこうして元気だから気にしてないよ。もう大丈夫」

更にレオ様は謝罪を続ける。

「それと、聖女の発見がこんなにも遅くなってしまったことも、王国を代表して謝らせてくれ、本当に申し訳なかった」

「あーそれねぇ。まぁ確かに、もうちょっと早く見つけてくれてたらって思わなくもないけど、しょうがないっていうか、そもそもレオ様のせいじゃないっていうか、まぁどうしようもないことって結構あると思うし。うん、いいよいいよ、本当もう気にしないで」

レオ様が罪の意識に押し潰されそうな表情をするもんだから、なんかあまりに気の毒で、大したことないよーみたいな軽い感じで受け流した。

「ちなみに、私ってどれくらいこの森にいたとかわかってるの?」

空気が凍りつくのを感じた。

ジョニデがさっきのレオ様を上回る勢いで顔色を悪くしている。

「ジョニデ?どうしたの?」

ジョニデが重々しく口を開いた。

「聖女がこの世界に誕生して、もうすぐ11年になります」

まじかー。

この体のサイズ感でもしかしたらって思ってはいたけど、実際に11年とか言われるとちょっと引くわー。

「11年前、私が、聖女の召喚の儀を行いました」

ん?今、なんて言った?

真顔でジョニデを凝視する。

ジョニデは沈痛な面持ちで私を見て繰り返した。

「私が聖女の召喚の儀を行ったんです」

これはちょっと、無理だわ。さすがに軽く流せる話じゃない。

「ごめん。少し、時間をくれるかな?」

ジョニデも、その重さの違いを理解しているのだろう。無言のまま頭を下げる。

「サル、行こう」

立ち上がり、サルを呼ぶ。

そして私はテントを離れ、住み慣れた森の中へと再び入って行った。結界は張っていないが、多分必要ないだろう。

とにかく今は、考える時間が欲しいのだ。