俺は先代の聖女の記憶はほぼないので、今目の前にいるこの少女が俺にとっては初の聖女との対面となる。

昨日も、何なら半年前も対面はしているが、落ち着いた状態でという意味でだ。

ただ、そういう意味では、まだ対面はできていないのかもしれない。

俺の前で、聖女がもの凄い勢いで食べ物を口の中に詰め込んでいる。落ち着け、と言いたいところだが空気を読んで黙っている。

教皇が自分の皿をそっと聖女の前に移動させると、聖女は満面の笑みでそれを受け取り、口に詰め込んだ。

お、俺の皿も渡した方がいいのだろうか、、教皇に視線を送ると、彼が諦観の表情で首を振る。必要なさそうだ。

聖女は昨日、興奮気味に自分の不安を吐露し、誤解が解けて安心したのか、間もなく眠りについてしまった。

腹が十分満たされれば、今日は落ち着いて話ができるかもしれないと期待している。

何から話をしようか。

昨日の不安な様子や、今の食事の様子を見て、できる限り聖女の希望に添った形でこの先のことを話せればと思っている。

今更焦る気持ちはない。王国の奴らなどいくらでも待たせておけばいいんだ。

そうだ、サルのことをまず謝らないといけないな。見つけるのが遅くなってしまったことも。

俺達は、聖女に許してもらうことから始めなくてはいけない。