おそらく聖女の魔力が発動し、言葉が通じるようになった。

聖女は、サルを傷つけた男を攻撃してしまったせいで、私達に捕らわれると思い込んでいたようだった。

私が日々聖女を想って祈りを捧げていたのも、呪っていると思われていたらしい。ちなみに贈り物は罠だと信じてしばらく放置したという。

ひとつひとつ丁寧に誤解を解いて、私達は聖女の敵ではないと説明し、納得してもらった。

もっと話を聞きたかったのだが、途中で聖女の様子がおかしくなり、突然寝始めてしまって強制終了となった。

その後王子に詰め寄られ、説明を求められた。

結界の穴を見つけたところから全て話し、謝罪した。

王子を悪戯に落胆させるようなことは避けたかったと正直に話すと、彼は複雑な顔をしたあとに納得してくれたようだった。

やはり王子は心根の優しい、いい青年である。

彼は強い、そして忍耐もある。男女問わず人を惹きつける魅力を持ち、智力も高い。それでいて驕ることを知らないのだ。全てを兼ね備えていると言っても過言ではないだろう。

王妃がこの第二王子を遠ざけようとするのはある意味正しいが、王国の未来を思えば、こんなにも優秀な人材を森の奥で燻らせているのは大きな損失であろう。

明日は聖女の話をもっとたくさん聞けるだろうか。

早く王子を国に帰してやりたいと思う気持ちは確かにあるが、あの一風変わった聖女が何を考えているのかは、まさに神のみぞ知るである。