想像より遥かに容易く姿を現した聖女の様子が不謹慎にもおかしくて、笑いを止めることができなかった。

ひと言では言い表しづらいが、この聖女が纏う雰囲気は、これまでの聖女のイメージとはかなりかけ離れている。その違いは決して年齢によるものではなさそうだ。

正式に鑑定してみなければわからないが、先代の聖女と比べると、魔力量は間違いなく桁違いであり、その質もかなり高いだろう。あの奇跡の大魔法を放っただけのことはある。

そして何よりも違うのが、聖女から呪いを含む攻撃系の魔力を感じることだ。王子からの報告である程度予想はしていたが、思っていたよりもその存在を強く感じる。

そして、聞いていたよりも体がかなり大きい。

魔法医の診断が必要だが、この尋常ではない魔力量は、赤ん坊だった聖女が命を繋ぐために、繰り返し繰り返し魔力を使い続けた結果なのかもしれない。魔法で命を繋ぐだけでは、体まで成長させることはかなわなかったのだろう。

サルから栄養を与えられて成長し始めたのだとしたら、この急成長も頷ける。おそらく、サルとの出会いは、想像より遥かに遅かったのだ。

「※※※※、※※※※※※※※※※※※※※?」

聖女が何やら照れている。

言葉が通じないと思って、何か恥ずかしいことでも言ったのだろう。見ためは子供だが、転生者なら中身は大人のはずだが。新しい聖女はどうやら、かなりユニークな人柄らしい。

何を言ってるかはわからないが、登場した時の様子といい、多分悪ぶっているように感じるのだが、違うだろうか。見ためが子供で、しかも聖女が悪ぶってる様子は、直視できないおもしろさである。

この10年、聖女は地獄のような時間を過ごしていたのかもしれない。正気を保ち続けることすら難しい環境だったかもしれない。この先、つらく苦しかった聖女の10年間が、私に重くのしかかってくるだろう。

聖女を召喚したのはこの私だ。

そして10年もの間、聖女を探すことすらせず、苦しい環境の中に放置し続けたのも私なのだ。

私は、聖女のユニークさに、少しばかりほっとする。聖女が精神を病むことなく今ここにいることを、心から感謝したい。

聖女のために、私にできることは全てやろう。そのために私は存在しているのだから。

どうすれば聖女の話を聞けるようになるのか、まずはそこを解決することから始めねばなるまい。