『なんということでしょう』

『隠しようのない絶望的なおうとつのなさ、手の施しようがないと誰もが諦めていたそのツルペタが、匠の技によって見事なまでにカモフラージュされ、人間らしい美しいフォルムへと様変わりしたのです』

懐かしいナレーション、そしてビフォーとアフターを連想させるBGMが脳内で再生されている。

私は服が着れることのありがたさを噛み締めていた。

ああ、神様、感謝致します!

パンツを履いてないからスースーするけど、今の私にとってはそれすらも服を身に付けていることの証明にしかならない。

そしていい匂いの元は、何かオイルのようなものだった。香水とはちょっと違う。

あ、ちなみに私、全然汚れてないのよ。匂いも無臭。自分じゃわかりづらいかもだけど、多分無臭。水浴びすらしてないのに、不思議だよね。これも魔法かな?

とりあえず、このいい匂いがするオイルは髪に塗り込んでみよう。

はあ、薔薇の匂いかなあ。すっごく満たされた。もう満足した。このまま死んじゃってもオッケーだわ。

サル、ごめんね。先立つ不幸を許してね。でも私、今、とっても幸せなの。もしこれが夢だったら絶望して死んでしまうくらい幸せ。サルと出会った日と同じくらい幸せ。

幸せ過ぎて、また眠ってしまった。

翌日、目が覚めた私は、袋に入っていたチョコをチビチビ食べていた。もったいなくて、どうしてもチビチビ食べてしまうけど、見逃して欲しい。

ていうか、興奮し過ぎて忘れてたけど、この袋は神様からの贈り物じゃなくてあの人間達の物だった。

全裸じゃなくなったし、もう隠れる必要はないよね。結界もあるから大丈夫だとは思うけど、もし捕まってサルと引き離されたら、この前みたいな呪いを発動して逃げればいっか!

いつの間にか、結界とか癒しの魔法とか呪いとか、転生あるあるの王道みたいな感じだね!

もしかして私、魔王?魔王に転生とか、超うけるんだけどー。

なんて考えながら、ちょっと魔王を意識して悪い感じを醸しつつ、レオ様達の元へ向かった。

何故かじーさんが笑いを噛み殺しているように見えるが、解せんな。

レオ様は相変わらずキラキラ。近くで見てもキラキラ。このキラキラは汗じゃなかったらしい。

じーさんは近くでみたらあの校長よりだいぶ若そうだ。あの校長みたいな服装のせいで老けて見えてたんだな。

それどころか、何気にレオ様に負けず劣らずのイケメンか?敢えていうなら、パイレーツなジョニデ風?

イケメンの種類が違い過ぎて、甲乙付けがたいな!

そんなことより、登場してみたものの、このあとどうすりゃいいの?

「それじゃあ、世界の終わりについて話そうか?」

日本語が通じないのをいいことに、ちょっと魔王っぽく言ってみた。

私の脳内でセカオワの有名曲が虚しく流れて消えていく。

沈黙が長過ぎる。

これ、どうしたらいいの?