王国へ転移できるなら戴冠式まで余裕があるからと、少しの間、公国に滞在することになった。

キラキラは会えなかった時間を埋めるかの如く猛攻撃をかけてきて、りかちゃんは照れて逃げ腰ではあるものの陥落間近。俺のHPはガリガリ削られ、あきらに慰めてもらう日々が続いていた。

ある日キラキラが公国の王に招かれ城に行き、俺は久し振りにりかちゃんとの穏やかな時間を満喫していた。

「はあああ、やっぱりサルとの時間が一番癒される。レオ様のせいで最近サルが足りなかったんだ。サルも寂しかったよね、ごめんね?」

りかちゃんがぎゅうっと抱きしめてくれたのが嬉しくて、お返しに顔をペロペロする。

しばらく二人でゆったりと過ごしていたら、あきらが話しかけてきた。

「梨花子さんて、前世では結婚とかしてたんですか?」

『なっ!お前!何を聞くつもりだ!』

抗議の声をあげるもあきらは俺を無視して、むしろ黙ってろと言わんばかりの視線を送ってくる。

そしてりかちゃんは、あきらを威嚇する俺を宥めるように撫でて、返答した。

「うん、してたよ。転生する前の本当に短い間だけだったけどね、、」

あの時のことを思い出しているのか、りかちゃんが少し寂しそうな顔をしている。

「僕は前世で結婚できなかったから羨ましいな。結婚は、幸せ、、でしたか?」

「うん、夢のように幸せな時間だったよ」

「そっか、、ご主人はどんな人だったんですか?」

りかちゃんは遠い目をして、、多分、俺のことを思い出してくれているのか、幸せそうに微笑んだ。

「りょうちゃんは、、私に色んなことを教えてくれる、凄い人だった」

凄い人、、まさかりかちゃんが俺のことをそんな風に思ってくれていたなんて、知らなかった。

「りょうちゃんに出会う前の私、勉強以外のことに全く興味を持てなくて、あれは多分人間じゃなかった、ロボットだったんだと思う。勉強以外の足りないパーツを、長い時間をかけてひとつずつ優しく埋めてくれて、、りょうちゃんが私を人間にしてくれたの。今の私が感じている、楽しいも嬉しいも全部、りょうちゃんが教えてくれた。つらいも苦しいも寂しいも、、ね」

りかちゃん、、

「余命を知った時、死ぬことより、りょうちゃんとの時間が終わってしまうのが、何よりもつらかった。ロボットのままだったらそんな思いをしないで済んだのかもしれないけど、それでもやり直せるなら、私はもう一度りょうちゃんと出会える人生を選びたい」

少しつらそうだったりかちゃんの表情が、穏やかなものに変わった。

「りょうちゃんが教えてくれた楽しいや嬉しいは、負の感情を全部塗り替えてしまう、魔法よりも凄い、私にとって、何よりも大切な宝物だから」

「梨花子さんは、今もご主人のことを想ってるんですね、、」

「うん、、愛してる」

はにかんだ微笑みを浮かべてそう呟いたりかちゃんは、とても美しかった。