その日も朝から屋外で実験を繰り返し、そろそろお昼にしようと転移魔法で街へ戻った。

「聖女!」

あきら君の家に移動して食堂に入ろうとした時、聞き覚えのある声で呼び止められた。

声のした方を振り向くと、夢にまで見た懐かしい人の姿が目に飛び込んできた。

「レオさ、、ま?」

レオ様は驚きで動けないでいる私のそばに駆け寄り、以前と変わらない優しい笑顔で私の頬に手を添えた。

「会えない間にすっかり素敵な女性になってしまったんだな。元気そうで良かった」

ずっと会いたくて会えなかったレオ様が目の前にいる。そのことがただただ嬉しくて、他には何も考えられなくて、レオ様を見上げたまま立ち尽くすことしかできなかった。

「え?えっ!?どうした?ごめん!迎えにくるのが遅くなって本当にすまなかった!頼むからそんなに泣かないでくれよ、な?」

声もなく涙をこぼし始めた私に驚いたレオ様が、添えていた手で涙を拭いながら慌てた様子で懇願してきたけど、涙は止まりそうにない。

私は涙を止める努力を諦め、そのままレオ様にしがみついた。

『会いたかった』

声には出さなかったけど、この想いがレオ様に届くことを願って、レオ様の背中へ回した手に力を込める。

突然抱きつかれてレオ様は更に慌てた様子だったが、私を宥めるように優しく抱きしめ返してくれた。

「俺も、ずっとずっと、会いたかった」

「あのー、盛り上がってるところ大変恐縮ですが、昼時に出入口塞ぐとか、とんだ営業妨害なんですけど、、」

「ちょっと!ダニエリオ!?あんたなんて空気の読めない子なの!?そんなんだから、いつまでも彼女ができないのよ!?」

「母さん!?人が気にしてること、こんなところで普通言う?僕がこうなのは、多分母さんからの遺伝じゃないかな!?」

「お前、母さんから産まれてないんだから、遺伝なわけないだろ?馬鹿なのか?」

「父さんこそ、言葉のあやっていうの知らないのかな!?」

「まあまあ皆さん、落ち着いて。とりあえず中に入りましょう」

店内から様子を伺っていたらしいあきら君達が親子喧嘩を始めたため、ジョニデが間に入って場を納めた。

レオ様も私と同じ気持ちでいてくれたことが嬉しくて余計に溢れ出した涙がこの騒ぎであっけなく止まり、涙を拭って彼を見上げる。

「レオ様も一緒にお昼食べるでしょ?」

「ああ、もちろん」

レオ様の笑顔が眩し過ぎて、涙でボロボロであろう自分の顔が恥ずかしい。

「大丈夫、聖女はどんな顔でもかわいいよ」

さっきまで不安を感じていたのが馬鹿馬鹿しくなるほどに、レオ様は2年前と同じレオ様のままだった。2年前と違うのは、レオ様への気持ちを自覚した私が、彼の甘い言葉に顔を赤くしてしまうことだろう。

そんな私に少し驚き、嬉しそうに微笑んだレオ様が追撃を加えてくる。

「照れてる聖女も堪らなくかわいいな」

これは、、やばいかもしれない。

「はあ、なんだこれ、本当にかわいい。聖女、俺と結婚しよう?駄目?」

駄目だ、こんなの耐えられない。恥ずかし過ぎて死んでしまいそうだ。