「ねえ、あきら君、魔法陣て書ける?」

「魔法陣?、、どうしてですか?」

「ファンタジーだと召喚といえば魔法陣なはずなのに、この世界ではそれがないから、私やあきら君が森に放置されることになったのかなって思ったんだよね」

「え?召喚魔法の詳細教えてもらえたんですか?」

「いや、ジョニデは意地悪だから絶対に教えてくれないんだよ。だから推測ではあるけど、どんなに探しても魔法陣について書かれてる本もないし、、」

「梨花子さんが考えてる魔法陣は日本独自の完全ファンタジーのやつですよね?まあでも、神殿に行けば見つかるかもしれませんよ?」

「うーーーん」

わかってる。最近襲撃がピタッとなくなったし、別にレオ様のお迎えを待たずに王国に行くのもありだとは思うんだ。転移魔法を使えば一瞬で行けちゃうし。

でも私は、レオ様が迎えに来てくれるのを待つつもりでいた。

『必ず迎えにくるよ』

そう言って王国に戻ったレオ様を待たずこちらから向かうことに、なんとなく抵抗を感じていたから。

レオ様と離れて1年半、私にはいつもサルがそばにいてくれるし、ジョニデやあきら君もいるから寂しくはない。

学校を卒業したあきら君と魔法研究所を作る計画を立てたりもして、なんなら充実した日々を送っているかもしれない。

私とあきら君とジョニデの3人で魔法について話すのはとても楽しいけれど、優秀な人材や魔法に関する希少な書物は、やはり王国にある神殿に集中しているのだ。

戦争が終わって半年が過ぎ、いつまでも動こうとしない私にジョニデとあきら君が痺れを切らしているようで、最近こうした直接的な表現で王国入りを催促してくるようになっていた。

このままじゃ駄目なのは理解してるんだけど、、

私は、迎えに来ないレオ様に会いに行って、拒絶されるのが怖かった。

私はレオ様のことが好きなんだと思う。前世でりょうちゃんと過ごした日々を忘れたつもりはないけど、レオ様は今の私に安心と安らぎを与えてくれたかけがえのない存在だった。

サルとジョニデも同じだけど、同じじゃなかったと、レオ様がいなくなって気付かされた。

迎えにくるという言葉を信じてレオ様を見送ったものの、時間が経てば経つほど、そばにいた時には気付きもしなかった感情が膨らみ続けた。

『離れたくない、ずっと一緒にいたい』

前世では余命を知った時に同じことを思い、りょうちゃんとの別れは、それから間もなくだったのだ。

トラウマのようなこの感情をうまく処理できず、私の思考は悪い方へと向かうばかりだった。迎えにこれない事情が何かあるのかもしれないけれど、事情を知らない私にとっては、迎えにこないことのみが真実だった。

私は恋愛経験が乏しく臆病なのだ。

レオ様はあんなにも私に愛を囁き続けてくれていたのに、会えない時間で愛は育たず、愛されているという自信は完全に萎んでしまった。

私は結論を先延ばしにしたくて、現実逃避で魔法の研究に没頭したのだった。