サザランド共和国の宣戦布告から半月が過ぎ、犠牲者の数は日々増えていた。

ランブランに阻まれ北に加勢の軍を送ることもできず、クラピソンでは一般市民に犠牲者が出た上に人質を取られ、手の出しようがない。

戦争を回避することもできず、終わらせることもままならない。自分のあまりの無力さを呪い唇を噛み拳を握った。

そこに、ユリウゴットの後任で補佐官となったベルナルディーノが、慌てた様子で戻ってきた。

「殿下!ラビアとアレオンから緊急の伝書が届きました!」

手渡された伝書は2通。北の三国と交戦中である公国の将軍と、ランブランと交戦中である王国の将軍からだった。

確認してみると、どちらもラグランジュ公が王国軍によって拘束されたという情報の真偽を問う内容である。

「どういうことだ?ラグランジュ公はクラピソンにいるはずだが、、何か報告は上がっているのか?」

「いえ、そのような情報は噂も含め全く届いておりません」

一体何が起こっているというのか、、

「とにかく事実確認が先だ」

急いで確認のための伝書を用意していると、更に伝書が届いた。

「失礼致します!クラピソンからの伝書をお持ち致しました!」

その伝書には、突然現れた聖女と教皇にラグランジュ公及びランブラン軍の回収を依頼され、現地に向かったところ、全員意識を奪われた状態で発見、無事拘束した旨が記されていた。

人質となっていたはずのクラピソンの市民は、聖女達が近くの村サモリに避難させたらしい。

「聖女はどんな魔法を使ったんだ、、?」

そもそも、ラグランジュ公の拘束を知らせる伝書より、北からの伝書が先に届くのは、どう考えてもおかしい。

いや、今は戦争を終わらせることに集中しよう。

「ラグランジュ公がいなくなればランブランはもはや落ちたも同然。話し合いに応じなければ、一気に攻め落とす!」

ランブランが落ちれば三国は公国軍と王国軍に挟まれ動きようがなくなる。それでも多少の反発はあるものと考えていたが、全てが空回りに終わった。

伝書が送られてきた時点で、聖女の働きによって停戦がなされていたのだ。クラピソンを制圧した聖女が、王国軍にランブラン軍の回収を依頼し、その後ラビアとアレオンで停戦を呼びかけたらしい。

人質の避難もそうだが、変幻自在なその行動は、何か未知の魔法によるものなのだろう。

「そんなことができるなら、俺のところにも顔を見せに来てくれればいいものを、、」

会えないことを寂しく感じているのは俺だけなのかもしれない。そう考えると胸が痛むが、この痛みにはもう慣れてしまった。

早く全てを終わらせて、聖女に会いたい。