聖女が目を覚ました数日後、城から呼び出しがあった。

3人で城に向かうと応接室に案内され、しばらくして王が現れた。

レグブルモア公国に入国した際、聖女と王子の3人で挨拶に訪れて以来なので、王と直接会うのはこれでニ度目となる。

トレドミレジア王国のクラウディウス王と遠縁にあたるヴァルフレード王は、年齢の割に聡明で落ち着いた印象であったが、今は少し疲れた様子が伺える。

「早速で申し訳ないが、はじめにダニエリオについて話したいのだが、構わないかな?」

「ええ、もちろん構いません」

緊張した様子のダニエリオに目線を送り、大丈夫だと頷いてみせる。

「ダニエリオ、君が転生者で強い魔力を持っている、というのは間違いないのかな?」

「はい、間違いありません」

「君の魔力は神聖魔法を帯びていると聞いたが、これも相違ないと?」

「詳しくはわかりませんが、僕の魔力が光を帯びてるのは確かです」

「教皇、この件について、説明はできるのだろうか?」

「これまで前例がないのであくまで推測の域を出ませんが、聖女の召喚を行った際、ダニエリオは聖女と共に召喚されたと考えられます」

王が大きく息を吐き、眉間を押さえた。王が何を考えているのかはわからないが、これは非常に扱いの難しい問題であろう。

「召喚されるのが聖女だけではなく共に召喚される者がいて、その者が大きな力を持っているとわかれば、今後聖女が召喚される度に争いが起こる可能性が生じることとなります」

「それは、、間違いなくそうなるだろうな」

「ですので、ダニエリオの処遇が悪しき前例とならぬよう、慎重にことを運ばねばならないでしょう」

「わかっている、、」

「一番問題が起こりづらいのは、神殿の預かりとすることかと思います」

「ちょっと待って下さい!」
「ジョニデ!何言ってんの!?」

私の発言に、黙って話を聞いていたダニエリオと聖女が、同時に口を挟んできたが、そのまま話を続ける。

「もちろん、ダニエリオにはこの国に家族がいるので、本人が望まない限りは、その身を神殿に縛る必要はないでしょう。ですが大きな力を持っているからには、放任することもできません」

ふたりとも不安でたまらないといった感じだ。

「ダニエリオの場合、保護者であるご両親と陛下に身元を保証してもらい、定期的に報告または面会をする、、という感じで問題ないと思いますが、いかがですか?」

聖女とダニエリオが納得して頷き合っている一方で、王は表情を曇らせたままである。

どうやら王は、我々の預かり知らぬところで、問題を抱えているようだった。