「あきら君、おはよー」

食堂で朝ごはんを食べていたら、梨花子さんがやってきた。

「あら!リカコちゃん!目が覚めたのね?心配してたのよー」

母さんが梨花子さんに駆け寄って、思い切り抱き締め頬擦りしている。

「お母さん、心配かけてごめんなさい。もう大丈夫」

梨花子さんが母さんの胸に埋もれている。あれは明らかに堪能しているな。断じて羨ましくなんかない。

声を聞きつけ父さんも厨房から顔を出す。

「お!リカコちゃん!餃子と炒飯かい?」

「うん!大盛りで!」

「あいよ!」

荒唐無稽な大魔法を放ち、1ヶ月以上も眠り続けていた人とは思えない緊張感のなさである。

「ジョニデと結界張り続けてくれてたんだってね。ありがとう」

「僕は教皇が仮眠をとる間交代しただけです。こんなこと続けてたら、教皇が早死にしちゃいますよ?」

「ううう、わかってるよお。でも限界を越えて魔法使うと、レベルが一気に上がるよ?」

梨花子さんが教皇に聞かれないように声を落としている。

「聖女、聞こえてないわけないでしょう?そんな危険な発言は控えて下さい。普通は限界を越えて魔法を使うと死んでしまうんですよ?」

「わかってるよーだからあきら君に言ってるんじゃーん」

「いや、僕は梨花子さんみたいに無茶なことはしないって決めてるんで」

「あきら君は本当おりこうちゃんだよねえ。もったいない。私達には無限の可能性があるんだよ!ふたりでタッグを組めば最強の最強!映画化だって夢じゃない!」

「映画化って、、梨花子さんは何と戦うつもりなんですか?」

「え?、、うーん、、あく、、?」

「悪って、、しょうもない、、」

「久し振りだというのに、あきら君ノリが悪過ぎるよ!」

「大丈夫、悪が現れても梨花子さんひとりで十分戦えますよ。僕も後方支援くらいはしてあげますから」

「えーつまんないのー。あ!そういえば、あきら君も転生者だって公表したの?」

「いや、正式にはしてませんが、梨花子さんの結界を教皇と交代で張ってたんで、もうお察しって感じですかね?」

「あーなるほど。それもそうだね」

あれ以降梨花子さんを狙った襲撃が激増し、確実に守りを固めるため、やむを得ず俺と教皇の交代制になったのだ。

これまでは梨花子さんを守ることが優先されて有耶無耶になっていたが、今後はそうもいかないだろう。俺から話を聞きたくてウズウズしている国の偉い人達が、手ぐすねを引いて待っているのだ。

まだ彼女もできていないのに、、俺の平凡だけど幸せな人生設計は、確実に狂い始めている。