世界中の人に自分の言葉が伝わるよう思念伝達を行った挙げ句、祝福の魔法を大放出した聖女は、当然の結果で魔動力を切らし、その場で意識を失った。

この人は、どうしてこんな無茶をするのか、、

結局、聖女はそのままひと月以上眠り続け、ダニエリオと交代で聖女の身の安全を確保することとなった。

だが聖女による祝福大放出の効果は絶大で、根強く残っていた転生者の悪い印象が、あっさりと書き換えられた。聖女はまたしても、歴史に残る大偉業を成し遂げてしまったのだ。

「本当にこの人は、どこまで私を驚かせれば気が済むのだか、、」

窓から射し込む朝日が聖女の寝顔を照らし、それを眺めながらふとそんなことを呟いた時、聖女の目がゆっくりと開かれた。

「ん?ジョニデ?」

「目が覚めましたか?」

まだ寝ぼけた様子の聖女が、ベッドの中でもぞもぞと体を動かした。

「もうあんな無茶はしないで下さい。寿命が縮まります」

「あー、、どれくらい寝てたの?」

「あれからひと月以上経ってます」

「まじか!、、ん?でもびっくりするほど魔動力の数値が上がってるな、、」

「聖女、本当にもうやめて下さいよ?聖女が寝てる間、私とダニエリオは交代で結界を張り続けてたんですよ?」

「、、ごめんなさい」

確かに、今回のことで聖女の魔動力は激増し、私はおろか、ダニエリオの数値も一気に抜き去っていた。

それほどまでに祝福の魔法は高度なもので、それを全世界に放出させるなど、普通ではありえないのだ。正直、聖女が目覚めるのにもっと時間がかかるかと思っていたが、回復のスピードも格段に上がったらしい。

「次からは事前にちゃんと相談して下さい」

「えーだって相談したら反対するでしょ?」

「当たり前です」

「でも、どうだった?効果はあったの?」

「はい。それはもう抜群の効果で、転生者が次々と名乗りを上げて、今教会は大忙しです」

「ほらね?やっぱ、あれくらい派手にやらないと、ねえ?」

聖女がニヤニヤとした表情でこちらを伺ってきた。絶対に反省しておらず、機会があればまた同じことを繰り返すに違いない。

「で?あきら君の家は?」

「ああ、食堂への嫌がらせも完全になくなりました」

「そっか、良かった」

あれだけの大魔法を使ったというのに、一番の目的は食堂への嫌がらせを止めることだったのだろう。聖女が心底ホッとしたような笑顔を見せた。

「では食堂に挨拶に行って、ついでに朝食にしましょうか?」

「やった!お父さんの餃子と炒飯!」

「久し振りの食事なんですから、お粥とかにした方がいいのでは?」

「ジョニデ馬鹿なの?私の治癒能力は、油になんて負けないよ?」

ごもっともではあるが、まさかこんなことで馬鹿呼ばわりされるとは、思ってもみなかった。