まあいい。この様子じゃ、こいつらはラグランジュ公の仲間だ。ついでに消えてもらおう。

こうしてる間も、王妃は奇声を発しながら、俺に怒声を浴びせ続けていた。騒ぎを聞きつけて人が集まり始め、近衛の隊長が駆けつける。

「これは、、一体、、どういう?」

叫び続ける王妃の腕を捻り上げた状態で拘束する俺を拘束する二人の護衛、、というシュールな絵面である。

「王妃にいきなり襲いかかられ脇腹を刺されたので、やむを得ず拘束している。こいつらは王妃を止めずに何故か私を拘束しているんだ。なんとかしてくれないか?」

「お前達!何を考えている!?殿下から手を放さぬか!」

隊長の指示で、護衛の二人が直ちに俺から引き離された。

相変わらずわめき散らしている王妃は俺が拘束したままだが、隊長もどうすればいいのかわからないのだろう。いくら現行犯とはいえ、王妃を罪に問うのはさすがに無理か、、

「何をしておる!王子が襲われたのだぞ!すぐに王妃を取り押さえよ!」

従者に付き添われ姿を現した父が隊長に命令を下し、ようやく王妃から手を放すことができた。

「ベルナデッド、何故このように愚かな真似をしたのだ、、」

悲しみからだろうか。父が顔を歪ませながら語りかけるが、残念ながらその声は王妃に届いていないようだった。

「お前なんて死んでしまえばいいのよ!放して!私が!私がこの手でお前を!」

尚も俺への殺意を爆発させている王妃に、父は諦めの表情で言葉を続ける。

「もういい。早く北の塔へ連れて行け」

興奮して暴れ狂う王妃は、父の命令でそのまま引きずられるようにして連れて行かれた。

「レオンティウス、怪我は大丈夫なのか?」

派手に出血して服が血だらけになっている俺を心配し、父が声をかけてきた。

「はい。かすった程度なので、大丈夫です」

「今後このようなことがないよう、あれには監視をつけて、塔から出さぬと約束する」

「恐れ入ります」

「それは私が預かろう」

父が俺の足元にある王妃の短剣を見てそう言うので、手に取って差し出す。

「有耶無耶にならぬよう、この件は私が責任をもって処理する」

その言葉通り、父は王妃の罪を認め、北の塔での幽閉を決めた。

ラグランジュ公を含め一切の面会が禁止され、その扱いは『死刑になった転生者』と同列のものだった。

兄の顔がチラついたが、王妃は王位継承者の俺を殺そうとしたのだ。これが妥当な判断なのだろう。