それから少しして、ようやく父との面会が許可された。

私室へと案内され、ソファーに座る父の向かいに腰を掛ける。

「体調が優れないと聞きましたが、その後、お加減はいかがですか?」

「ああ、大したことない。大丈夫だ」

父が無理をしているのは明らかで、顔色の悪さは誤魔化しようがない。

「父上、これは聖女が作った毒消しです。予防にもなるので、念のためお飲み下さい」

一度飲めばしばらく効果が続くこの毒消しは、治癒魔法を使えない俺のために聖女が作ってくれて、旅の間飲み続けていた物だった。

聖女達と別れてからも影を使って定期的に届けてもらっていたが、兄から父のことを聞き、追加で同じ物を送ってもらうことにした。

目の前で毒味した物を父に差し出す。

「これは、、凄いな」

父の顔色が目に見えて良くなっていく。やはり父は毒を盛られていたのだ。

「ただ、また別で命を狙われては意味がありません。化粧で誤魔化すなどして、体調が良くないふりは続けて頂けますか?」

「だがそれでは、、」

「ラグランジュ公の件に関しては承知しております。こちらで、できる限りの策を講じているところです」

簡単に、今現在の状況を説明する。

「本来私がすべきことを、お前に任せきりにしてしまったのだな。苦労をかけた。申し訳ない」

「父上、顔をお上げ下さい。4年もの間、国を留守にした私にも責任があるのですから。それよりも、ラグランジュ公の狙いが定かではない限り、今は一刻も早く守りを固め、もしもの時に備えるべきです」

ここに来た一番の目的を果たすため、話しを続ける。

「王国に反乱の予兆があることをレグブルモア公国へ知らせ、秘密裏に不可侵条約を交わすことは可能でしょうか?王国北部と北の三国に狙われる可能性がある公国に、万が一の時は我々が国を挙げて全面協力する旨を文書にして頂きたいのです」

「悪ければ侵略、良くて敵の傘下に下るより、不可侵を交わした上で協力を約束されるなら、公国に選択の余地はないな。わかった、すぐに手紙を書こう」

「それと、取り急ぎ備えが必要な領地に大量の貸し付けを行ったので、私の裁量で使える分の予算が既に尽きてしまって、、」

「ああ、それなら私の分をいくらかそちらに回すよう手配しておく」

「ありがとうございます」

予算の確保ができたことをユリウゴットに知られぬよう、何かしら手を打つ必要はあるが、これで盤石の体制をとれるはずだ。

あとは、時間との勝負になるだろう。