その後しばらくしてから、私はレオンティウスの執務室を訪れた。

「元気そうだな。久し振りに少し話でもしようかと思って、顔を見に来たんだ」

そう言ってソファーに腰を掛け、レオンティウスの補佐官が用意した紅茶を口にする。確か彼はラグランジュ公の部下だったと記憶している。

「ユリウゴット、、だったかな?私と弟の話はきっと君には退屈だろう。席を外してもらえると、私も気兼ねなく昔話に花を咲かせられるのだが、、」

「ユリウゴット、少し早いが昼食をとってくるといい」

「はい、かしこまりました」

補佐官が部屋をあとにし、レオンティウスとふたりきりになったが、監視が外れたとは思わない方がいいだろう。

「噂は聞いているよ、随分と活躍しているみたいだね。ラグランジュ公がお前を褒めていた」

「そうですか、光栄です」

「久し振りとはいえ何もそんなにかしこまらなくてもいいじゃないか。私が王になったら目も合わせてもらえなくなるのではと、心配してしまうよ?」

「そんな心配はいりませんよ、兄上」

レオンティウスは涼しい顔で笑顔を見せたが、頭の中では私が何しに来たのか見極めようとしていることだろう。

「戻ってから、父上とは話したか?」

「いえ、何度か面会を申し込んではいるのですが、なかなか都合がつかないようです」

「ああ。父上は今、体調が優れないと聞いている」

「え?」

「最近では議会に顔を出すのが精一杯で執務もままならず、重要な物も私に回って来ているようだ」

「魔法医はなんと言ってるのですか?」

「魔法をもってしても老いには抗えず死を避けられないことはお前も知っているだろう?魔法は万能ではない。原因がわからねば治しようがないのだ」

「原因がわからない、、」

「ラグランジュ公の口利きで優秀な魔法医を手配してもらっているのだが、最悪の事態もありうると覚悟しておく必要があるかもしれない。レオンティウス、お前もあまり無理をしていると、父上のように倒れるとも限らない。早死になんてしたくないだろう?体は大切にしないとな?」

「、、ありがとうございます」

ちゃんと脅しているように聞こえただろうか。

聡いレオンティウスのことだ。元々命を狙われている前提で動いているとは思うが、これで確信を持ってくれれば、防御はより固くなるだろう。

命を狙われている弟へまともに忠告もしてやれない。私は本当にどうしようもない人間だ。こんな私がいずれ王になるのだから、もはや王国は終わったも同然だな。