その後間もなく、梨花子さんは収納魔法の発動に成功した。それをきっかけにして、梨花子さんは水を得た魚のように新たな魔法を習得していった。

空間を同じ質量で切り取って入れ替えることで、物の瞬間移動を成功させ、実験を繰り返した結果、目に見える範囲内で自身の瞬間移動を可能にした。

だが、彼女が思う転移魔法とは、国と国を行き来できるレベルの物であったため、納得のいかない梨花子さんは実験を続けた。

まず収納魔法を進化させて異空間を作り、その内部で探知魔法を進化させて作ったマップを併用。そのマップで指定した場所に出口を作ることを成功させた。

しかし、この方法は実用化の難しい危険な魔法であることが、すぐに判明してしまう。

実験に熱中するあまり、自身の魔動力の残を見誤った梨花子さんは、異空間の中で魔力切れを起こして気を失い、一時行方不明になったのだ。

異空間に閉じ込められるというこの世界の常識では理解が及ばない事態に、教皇はえらく動揺した。

教皇が「なんとしても聖女を探さなければ」と、自分には無理だと半ば諦めていた空間魔法を不眠不休で習得したのには驚いた。

まあ、いくら教皇が頑張ったところで、梨花子さんが作った異空間に干渉することはできないだろう。

不幸中の幸い、聖女である梨花子さんが死ぬことは恐らくない。どうせ魔力切れで眠ってるだけだろうと考えていた俺の予想は正しく、10日後、梨花子さんは何事もなかったかのように、しれっと戻ってきた。

「ああ、聖女、良かった。無事で本当に良かった。どれだけ心配したことか、、」

梨花子さんが戻ってきたと聞きつけた教皇は、柄にもなく息を切らして部屋に入ってきたかと思うと、すぐさま梨花子さんを強く抱きしめ、涙ながらに安堵の言葉を繰り返した。

余程気を張っていたのだろう。教皇はそのまま気を失い、三日三晩眠り続けた。

「あんなジョニデ初めて見たよ。よっぽど心配させちゃったんだね。申し訳ないことしちゃったな」

「本当ですよ。あれ、梨花子さんじゃなかったら、魔力切れと同時に異空間が消滅して、多分術者も一緒に消えてしまいますからね?」

「まじかー。せっかく成功したけど、魔力も魔動力もかなり消費するし、消滅の危険まであるとなると、普通の人では使えない魔法だねえ、、」

梨花子さんはまた何やら考えている様子だ。本当に懲りない人だな。

「魔力や魔動力って貯めておけないかな?蓄電池みたいな魔道具があれば、、ジョニデが起きたら魔道具のことを詳しく聞いてみよう、、」

この調子だとまた何かやらかしかねんな。

教皇が目覚めたら、きつく説教してもらった方がいいかもしれない。