目覚めた私は、動物達に囲まれていた。

すぐそばにこの前目が合った巨大熊がいる。なんか狼っぽいのがウロチョロしてるね。あれはゴリラか?虎もいる?

サル?果物を口に押し込むの、今すぐやめて欲しい。美味しいけどね?

とりあえず、身の危険は感じない。感じないけど、落ち着かないよね。

結界はどうしちゃったんだろう。そして結界がないからって、みんな集まり過ぎだよね?お祭りかな?お祭りなのかな?

キョロキョロと周りを見回していたら、口笛みたいな音がした。

え?人がいるの?

動物達のすき間から、こちらの様子を伺っている人間の姿が見えた。

嘘だろ?私、全裸だぞ?

寝てる間にまた成長したのか、5~6歳くらいになっている。まいったな。でもこういうのは中途半端に隠したりすると余計に恥ずかしいんだよ。堂々としてれば、それが正義だ。

私はサルを抱いて立ち上がり、人間の方に向かってゆっくり歩き出した。動物達が私とサルのために道を開ける。

待てよ?動物達が周りに集まってたのって、もしかして結界の代わりに人間達から私を守ってた?

足を止める。

いつの間にか人間が増えていた。

突然サルが私にしがみついてくる。サルの様子がおかしい。

「どうちたの?」

サルに気を取られた瞬間、少し離れたところから断末魔の叫びが聞こえた。

人間がそばにいた猪を斬りつけたのだ。

その人間は私に向かって何か怒鳴っているが、残念ながら言葉が全く通じない。

やっぱり転生してたんだな、私。

それより、どう考えてもサルがこいつに怯えてるのが超気になる。猪が目の前で斬りつけられたせいかと思ったけど、サルはその前から怯えてたよね。何言ってるかわからなくても、意味なく猪を斬りつけたその行為が、全てを物語ってる。

もしかして、サルをあんな風にしたのは、お前なのか?

私の腕の中でぐったりしていたあの時のサルがフラッシュバックして、全身の血が煮えたぎるような感覚に襲われる。

絶対に許せない。

全身に纏わりつくような負の感情が、視線を通してその人間へと向かうのを感じる。

その人間が苦しそうに膝をついた。

お前なんてサルと同じ目に合えばいい。

その人間に絡みついた負の感情が、私の憎しみに反応して弾ける。

弾けた場所で皮膚が裂け、、

その瞬間、サルが私の顔を引っ掻いた。

私、、今、、人を殺そうとした?

シュッ!という音と共に、人間と動物達の間に結界ができた。

恐る恐る結界のそばに近付くと、さっき人間に斬りつけられた猪が苦しそうに横たわっている。

何故かこの子を癒す方法がわかる気がして、そっと手をかざす。

そして結界の外で、傷ついた腕を押さえて泣き叫んでいる人間にも同様に手をかざし、私は逃げるようにその場をあとにした。