このサル、元はフランス人だったと思う、間違いない。

『りかちゃん、好きだよ、愛してる』

年がら年中サルの甘過ぎる愛の囁きを聞かされていた俺は、正直うんざりしていた。

そして、サルがサルだと思っていた頃はまだ良かったが、中身が人間だったとわかると、その言動は、恋愛未経験で童貞の俺には、あまりにもエロ過ぎた。

心なしかサルに色気を感じるし、元々かわいいとは思っていたが、むしろイケメンに見えてきた。

そんなことを考えながら、いちゃつく2人を眺めていたら、また声が聞こえてきた。

『童貞君、あんまジロジロ見ないでくんない?』

「っな!?なな、なんだと!?」

「あきら君?どうした?大丈夫?」

あまりに動揺して、うっかりサルの言葉に反応してしまい、驚いた梨花子さんに心配されてしまった。

「いや、なんでもないです。ちょっとうたた寝してたかも。寝ぼけてました」

慌てて誤魔化したが、梨花子さんは騙せても、サルは騙せない。

『おい、聞こえてるんだろ?童貞君』

俺がひとりになったのを見計らって、サルが声をかけてきた。

き、聞こえないフリを、貫き通すべきだろうか。

『おい!無視すんなって!』

仕方なく振り返ると、サルが話を続けた。

『童貞君、俺の言葉がわかるんだよね?それでどこまで知ってるの?』

もう完全にばれてる。誤魔化しようがないので、正直に答えた。

「君は元が人間の転生ザルで、梨花子さんのことが大大大好きってことだけだよ」

『、、、いつから聞こえてたの?』

「最初に教会の訓練室に行った次の日から」

『まじか。聞こえてないと思ってたから、俺、結構恥ずかしいこと言ってたよな、、』

「ええ、まあ、そうですね。かなり」

サルが全力で照れている。どうやらフランス人ではなかったようだ。

『俺は前世でりかちゃんと結婚してた。今も変わらずりかちゃんを愛してる。でも今はサルだから、そばにいられるだけで満足するって決めてるんだ。例えりかちゃんが俺と同じ気持ちだったとしても、俺がサルになっちまったなんて知られたくない、、わかるだろ?』

元は夫婦だったのか。それは確かに、知られたくないかもしれない。

『それに、もしりかちゃんが、俺以外の男と幸せになる未来があるとしたら、俺はそれを邪魔したくない。だから一方的で申し訳ないけど、俺が転生ザルだってこと、誰にも言わないで欲しい』

ただのエロ猿かと思ってたが、意外といい奴だった。

俺は通訳魔法をオフにして、サルが転生ザルであることを忘れることにした。