翌日、レオ様はマッチョを連れて王国へ向かった。

そして私は、ジョニデと半月程かけて残りの教会を回りきったあと、予定通りダニエリオのいる学校に通い始めた。

この世界の名詞は私にとって鬼門だったらしく、言葉を覚えるのは予想より困難を極めた。多分、やる気の問題なのだろう。

学校外では通訳魔法があるので必要に迫られることがなく、不便を感じていなかったのも悪かったし、言葉を覚えるよりも、ダニエリオ改めあきら君と魔法の話をする方がより有意義で、それにばかり時間を費やしていたのもいけなかった。

「ねえねえあきら君、そろそろ転生者だってこと、公表しちゃったら?その方が制限なく魔法の研究も進められるし、良くない?」

「梨花子さん、そうやって日本語ばかり使ってるから、いつまで経っても言葉を覚えられないんですよ?それに、明煌(あきら)って呼ばないで下さい。その名前、本当好きじゃないんです。明るく煌めくなんてキャラじゃなくて、前世でどれだけからかわれたことか、、」

「ちょっとあきら君、日本語で喋ってよ。何言ってるか半分位わからなかったよ」

「はあ、こんなことなら、前世の名前を言うんじゃなかった」

あきら君が大きくため息をつき、愚痴を漏らす。

あきら君は、最初の爽やかな雰囲気とは少し印象が変わり、ジョニデとレオ様を足して割ったような人物だなと最近感じる。私といると前世のあきら君が顔を出してしまうせいで、キャラがぶれるのかもしれない。

「わかりました。それなら梨花子さんがこちらの言葉を習得したら、僕が転生者だと公表することにしましょう」

今のはジョニデっぽい。さっきの愚痴っぽいのはレオ様だ。この調子でふたりに塩を撒き続けられたら、ナメクジじゃなくても消滅してしまう。

はあ、私を甘々に甘やかしてくれたレオ様が既に懐かしい。レオ様、早く戻ってきてくれないかな。

私を慰めるためにサルが近づいてきて顔を舐めてくれる。気持ちいい、癒される。そうだね、嘆いていてもしょうがない。ならば本腰を入れて言葉を覚えよう。

とりあえず、レオ様に手伝ってもらった絵本の翻訳の束をやっつけるか。そのあとは、、

「あきら君にも手伝ってもらおうかな?覚悟しておいてね?」